きもの選びは友達探し、あなたの笑顔に癒される by かずまさ

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第874号 2015年7月29日「着たくなる日 No.3」

童話が好きで、童話づくりの店を開いた人。蕎麦(そば)好きが高じて、蕎麦打ちするうちに店まで開いてしまった人。豆腐屋に生まれ、豆腐のフルコース料理を考案した人。その店は、コーヒーまでも大豆を原料としたものを提供してくれる。共通するのは、『好き』という言葉。
我々は、自分の仕事に愛着を持っているだろうか?彼らは、福を持って日々対応しているから、自然と笑みが生まれ福顔になる。オギャーと生まれた時から死ぬまで、ずっと福顔の人なんているはずはない。そのような顔でいられるよう努力した結果だろう。好きな仕事を持ち、自由に楽しんで日々暮らす。そんな生活が出来ればと願う。
仲の良い夫婦は、空気のような存在の間柄と言われる。文句や注意をされてもケンカにならない。腹が立たない間柄。私は、そんな人間にはなれない。日々の生活の中で、あきらめの境地かなぁ・・・。
『着たくなる日』-そんな日があるだろうか?私は、毎日着物を着てはいるものの、休日には着ない。仕事だから着ているのか?当たり前のようにしていることを、ふと立ち止まって考えると、『なぜ?』という疑問が湧いてくる。『毎日着物を着なくてはいけない!』と誰かから強制されたわけではない。いつの間にか、そうすることが習慣になってしまっただけのことだ。着物屋なのだから、着物を着ていないよりは着ていた方がいいとは思う。
着物を着たくなるということは、夫婦の関係とよく似ている。言えてることは、難しいということ。

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第873号 2015年7月22日「着付について No.2」

873先日、着付を習っているというお客様が、お母様から譲り受けた着物を持って来店された。通っている着付教室の先生に、着物の寸法が自分に合っていないから綺麗に着装できないのだと言われたらしい。寸法直しをしたいとのご注文で、身巾が、袖付が、裄が、等々、細かい指示だ。
取りあえず、女房が、その着物をお客様に着せてみた。身巾や身丈は腰ひもの位置をこのくらいにして、上前や下前の位置はお腹まわりに合わせてこのあたりに、といった具合に調整しながら着せてみたところ、きれいに着装できた。年齢と共に、お母様と同じ体形に変化していたということか?まあ、そのあたりのことには触れないこととして、ただ、裄だけは今の人のほうが少し長めなので、そこは直すことにした。他の箇所については、着方の工夫で済んでしまうのだ。着付の先生が、そんなこともわからないのか?と女房が不思議がっていた。先生自身、毎日は着物を着たりしないからか?
私も近頃、年のせいで背が縮み、階段等で裾を踏むようになった。『猫背だからだわ。』とか、『もっとシャンと着なさい!』と女房に注意される。お腹も出てきたから、前巾も合わなくなってきた。だから、着る時に少し調整して着るようにしている。しかし、いちいち直しているのも大変だ。自分で着物に合わせるしかない。毎日着ていれば、自然とそれなりに着られるようになる。その辺のこともわかって、先生は指導しなくてはいけないと思う。
お金さえ出せば、寸法を直すことはできる。しかし、その寸法は、本当にその人の体に合ったものなのか?毎日のように着用していた昔の人たちからみれば、ただのクレームにしか聞こえないかもしれない。考えたら恐ろしい話だ。

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第872号 2015年7月17日「いつの間にか65才」

暑くなりました。世間はすっかり夏姿。
昔は、『夏に着物なんて・・・』と思っていました。ところが、近頃は、夏の浴衣が人気で、着用者が多い。着物は、あまりにも決まりごとが多く難しいものだというイメージが強いのに対して、浴衣は安価で着装も比較的簡単なところが受けているのか?でも、私からすれば、『好きなように着用すればいいのに』と思います。
私は、40歳から毎日着物を着るようになりました。初めの頃は、年配の方から、『もっときちんと着なさい!』と注意されたり、旅先で、着装を直されたりしたこともありました。でも、その当時でも、本当に着物の好きな方たちからは、『自由に着ていればいいのよ。』と誉められたりもしました。
年寄りが、昔はこうだったとか、現在の己の姿も考えずに文句をつけたり批評をするから、若者は年寄りの意見を聞かなくなるのです。何か、最近の自分の姿を話しているような・・・。
いつの間にか、自分も65才という定年の時期を迎えてしまいました。同級生でも、リタイアした人が多くなりました。『サラリーマンには定年があっていいなあ』と言うと、『まだ元気なのに、仕事も出来るのに辞めさせられて辛い。』と言う。男は特に、仕事を取り上げられると、時間を持て余してしまって困るようです。『いつでもいいから電話をくれ!』と言われても、中小企業の経営者の身、毎日遊んでいるわけにもいかない。
本人たちも、本当は遊んでいるより仕事をしていたいようです。でも、今までしてきた仕事も、それまでの地位も無くなってしまった。ほどほどに好きな仕事があれば、年金プラスいくらかの給料が入ってくる。そんな生活ができれば一番いいなあ、というところでしょうか。
『お前は自分で定年を決められるからいいな!』と言われる。お互い、他人のことはよく見えるようです。
いつの間にか65才。いつまで着物が着用できるか?着姿を楽しそうに見ていられる年寄りになりたい。

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第871号 2015年7月7日「テレアポ No.6」

店にいると、営業の電話がよく掛かってくる。『社長はおられますか?』とか、『〇〇の担当の方はおられますか?』とかから始まり、上手な口調で話される。ほとんどは、『いません!』と言って電話を切る。店舗名を言ったところで、『社長はおられますか?』と尋ねてくるところをみると、こちらが中小企業だということをわかって掛けてきているのだろう。
当店もテレアポをしているが、ほとんどが個人のお宅。当店に掛かってくる営業電話と同じ調子で、『奥様はおられますか?』と尋ねても、相手は『いません!』と、たとえ在宅であったとしても答えるのだろうなあ。
何度も何度も掛けてくる業者もある。夜の9時を過ぎていたり、朝早くだったりした時には、良い気持ちでの応対はできない。立場が変われば、対応も変わる。車の運転者の立場に立った時と歩行者の立場に立った時の心理と同じだ。
暗い気持ちであったり、嫌々電話をしていれば、それが相手に伝わると思い、なるべく明るく電話するようにしているが、これが難しい。プロの方のテレアポはさすがにスマートでいい。そうなりたいと願うが、なかなかなれるものではない。
30年ほど前は、電話ではなく、名簿を片手に地図を広げ、軒並み訪問した。雨の日などは、とても嫌だった。
訪問販売は、相手の顔が見えるので、気持ちが直接伝わってくる。相手も、直接こちらの姿を見て評価できるわけだから、それはそれで厳しく辛い面もあったが、購入していただいた時の感激は、今以上のものがあった。
当店は、現在、新規訪問の営業活動は行っていないが、今でもそのような方法で商いをされている店もある。それには感心する。ただ、最近は、留守宅が多いので空振りに終わることも多いようだ。
自分の店の理念、サービス、商品内容等をお客様にわかっていただくのは難しい。どんな手法を取ろうが、底辺に『私は着物が好きだ!』という気持ちがなければ楽しい仕事にはならないし、お客様にも着物の良さは伝わらない。

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第870号 2015年6月30日「カード社会」

当店が加盟している振袖21グループの例会に出席するため、京都へ出掛けた。
名古屋に戻り一週間が経った頃、京都の警察から電話をいただいた。驚いて財布の中身を調べてみて、その時初めて気がついた。クレジットカード類が4枚無い!新幹線のホームの売店でお茶を買った。きっと、その時に落としたのだろう。
届けてくださった親切な人に、お礼も言えない。次に京都へ行くのは一か月後の予定だから、それまでカードを受け取ることも出来ない。引き取りは代理人でもよいということを係の人が教えてくれた。指示された必要書類を知人に託して取りに行ってもらった。
悪用はされていないだろうと思いながらも、カード会社に紛失の届け出をし、再発行の手続きをした。電気・ガス・NTT等々の支払いもカード払いにしてあったので、これらの手続きも必要だった。
便利で簡単に利用できるカードだが、紛失した時のことなど今まで考えたこともなかった。信用の重大さを感じた。カード1枚で何十万円の買い物もできてしまう。初めての経験だったが、本当に運が良かった。
いろいろな方にご迷惑をお掛けしました。感謝しております。
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振袖や着物の購入・レンタルの支払いに、カードを利用される方が多くなった。現金を持たないで買い物ができてしまう上、ポイントまで貯まる。貯まれば、また買い物ができる。
先日、そのカードを紛失して慌てたが、もし落としたり盗まれたりしても、警察に届け出さえしてあれば、万が一利用されても保険で対応できるという。紛失して初めて知ったことだが、そんな安心安全が、カードには付いている。
どんな支払いもカード払いという人がある。私は、新幹線・タクシー・食事・ホテル・ガソリンスタンド等に使用することが多い。カード払いにしておけば、自動的に通帳に記帳されることになるので、いつ利用したかもわかり、とても便利だ。接待などをすることは少ないが、仕事でいろいろお世話になっている人とたまに行く食事は、やはりカード払いにする。カードさえ持っていれば、現金は最小限持つだけで済む。
カードを失くした時、カード会社から新しいカードにしたほうがいいと勧めれられ、言われるまま作り直した。後日届く明細をチェックすれば、その月に利用したものが一目瞭然だ。法人カードなので、あらゆる支払いを自動引落にしてある。大変なものを落としたのだと事の重大さに改めて気づいた。

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第869号 2015年6月22日「着たくなる日 No.2」

869我々着物業界の人間は、『着たくなる』ような商いをしているだろうか?経営者自身が着物に愛着を抱き、語り、商いをしているだろうか?商いは上手でも、その後のケアをまったくしない振袖専門店が多い。シミ抜きのこと、ヘア・メイク・着付のこと。
直線縫いの着物を曲線の体に綺麗に纏(まと)わせるには、まずは着慣れることが一番です。何度も着用しなくては、綺麗に着られるはずはないのです。
しかし、現代人は、着慣れるための練習などしません。だから、綺麗に着ることができないのは仕方のないことなのです。着崩れしないように補整具を用いて縛り付けるのです。苦しい思いをしたことだけが思い出となる成人式になってしまうのか?着付の上手な人に当たれば、そんな辛い一日を過ごすことなく過ごせるでしょう。そんな人も多くはいますが・・・。
成人式の前に一度でもいいから着用してみてください。歩き方や動きが洋服とは違うのだということが実感できます。それも、ただ着たり脱いだりするだけの練習ではなく、着装した状態でお茶をしたり、食事をしたり、散歩をしたりすればもっと着物に慣れてきます。そういう体験をしているうちに、着物を好きになり、『着たくなる』という気持ちになってくれればうれしいです。
『着たくなる日』のタイトルは奥が深い。しかし、日本人ならそんな体験をしながら着物を着用してほしいものです。理解できるようになってほしい。

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第868号 2015年6月5日「着たくなる日」

数年前から取り組んでみたいと思っていた『着たくなる日』という振袖ブックを、ようやく今年取り扱うことになった。若い人に人気のMAGGYというモデルさんがメインに載っている豪華本だ。着物に興味のある人なら、いきなり捨てたりはしないだろう。
そのことについては次の機会に書くとして、タイトルの『着たくなる日』、このタイトルがとても気になるのだ。いったい誰がこんなタイトルをつけたのだろう?十数年前に名づけられたそうだが、おもしろい!飽きない!忘れない!何といっても、これを振袖ブックにつけたというところがいい。
未婚女性が、初めて正装として着用するのが振袖だ。もちろん、それまでの成長過程で、七五三や十三参りで着用した着物もあるだろうが、それらは大抵ご両親や祖父母が選んで着せてきた。だから、振袖が自分自身で選ぶ最初の着物となる人が多い。特に現代は、その傾向が強い。
成人というひとつの節目のセレモニーに、自らがセレクトした着物を着る。それが振袖なのだ。これはまさしく『着たくなる日』に着用したい私の振袖ではないか。憧れの着物だ。
自分が大人になった時、どんな女性になっているか?なっていたいか?誰もが夢見た理想の姿があると思う。小さな子供に『大人になったらどんな人になりたい?』と聞いた時、ワクワクしながら笑顔で答える。そんな子供たちの声が聞こえてきそうなタイトルだ。
ワクワク、ドキドキしながら振袖を選んで着用してほしい。そして、何度も長時間着てほしい。
着物を好きになってほしい。何度読み返しても飽きない童話のように。

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第867号 2015年5月11日「テレアポ No.5」

9.11の再来か?それともハイジャック?最近、また恐ろしい事件(事故?)が起きた。
他人を巻き込むテロ行為は、まったく関係のない人の人生を奪い取ってしまう。やりきれないことだ。オレオレ詐欺で騙されてしまった人も同じだ。
テレアポをしていると、昔のような返事が来ない。まず名前を言わない。声が小さい。こちらが名乗ると対応が変わる人もあるが、以前のような返事が返ってくるのは商売屋くらい。防衛反応から、そんな対応になってしまうのだろうか?あまりより気分ではないが、こちらも勝手に、それも一方的に電話をしているのだから、相手がどう対応しようが、それについてとやかく言える立場にはない。
『新成人の方々に、振袖のことでお電話させていただいていますが・・・』
『勝手にしたら・・・』ガチャン!の人もある。
『どこで電話番号を調べたんだ?』このようなやり取りは何度もしているので素早く対応できる。
中には、とても18歳・19歳とは思えない口調で対応されるお嬢さんもいる。そのように育てた我々親世代が悪いのだが、これにはさすがに閉口する。
お客様側の立場と売る側の立場は、まったく反対なのだからお客様に喜ばれる対応をしなくてはいけない。売る側の人間が、そうでない対応をしたら・・・?
今は、『若い人は・・・』と注意するのではなく、褒めて育てる時代だ。どんどん褒めなさいということか?『おい!ハイジャック犯を褒めろというのか!?』これは極端な話。
わからんことが世の中いっぱい。

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第866号 2015年5月4日「今どきの商い」

昨年は、消費税率引き上げの影響で、3月末までとそれ以降とでは、振袖販売にずいぶん違いがあった。
上がる前に成約しておいた方がいいと思うのは誰でも同じだ。その時に、27年成人の方はもちろんのこと、28年成人の方にも照準を合わせるべきだった。当店は、一昨年と同じ宣伝方法を通していたので、その頃、28年成人には積極的に宣伝活動をしておらず、何事にも出遅れた感があった。
平成29年成人に対して、大型振袖レンタル店などは、すでに、この3月からDMを本格的に郵送し始めている。それに煽(あお)られ、我々のような中小振袖店もゴールデンウィークに合わせてDMを郵送するところもあったと聞く。こんなにも早くからテレアポやDMが送られてきたら消費者も驚く。現に、『まだ商品はありますか?』と言って来店される28年成人のお客様もあるのだ。
28年に成人式を迎えるまでには、まだ8ヶ月もある。草稿から始めるわけでもあるまい。既製品選びのために、早い方では、2年以上も前に『もう遅いですよ!』と煽られて購入させられてしまう。購入ならまだしも、レンタル品の成約も同じでは何かおかしい。『厄払いのため』・『お茶会』・『結婚式への参列』など、何かほかに使用目的があるのなら、早く用意しておくことも必要なのだろうが。
そう言いながら、当店もその潮流に乗り遅れないよう対応はしている。
これから、ますますITの時代となってくる。そして、どんどん名簿は入手しにくくなる。そうなれば、業者間のDM合戦も少なくなってくるだろう。それまでは、仕方のないことなのかな?とも思う。
今の若いお嬢さん方は、ネット検索で商品をチェックして、日本中どこからでもお気に入りの品を探す。そんな人が多くなったとも感じる。

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第865号 2015年4月27日「テレアポ No.4」

865あるご家庭に振袖のテレアポをしたら、電話に出られた方が『そんな子はいないよ。』と言われた。どうやらお父様のようだ。『〇〇さんですが・・・』と話すと、『その子はイギリスにいて、もう戻ってこないだろう。だから着物はいらない。これからは世界に出て生きる時代だよ。』と続けられた。確かにそうかもしれない。
休日に電話をしたら、大人顔負けの応対をするご本人もいた。迷惑電話とは思わないのか、いろいろ話を聞いてくれたが、最後に『母がいる時に電話してください。』と。こんな子が営業に回ったら、さぞすごい成績を上げてくれるだろうと思った。いや、よほど好きな仕事に当たればそうかもしれないが、果たしてそんな仕事が見つかるだろうか?
65歳にもなると、表も裏も考えるからダメですね。感心して女房に話すと、『それでも、おれおれ詐欺の被害が増大しているのよ。』 それ以上の上手(うわて)がいるということか。『ボケ老人が引っかかるんだろ?』 『あなたもボケ老人の一人じゃない!』 もうめちゃくちゃ。
先日は、おじいちゃんと30分近くも話し込んでしまった。時間潰しの相手と思ったのかな?ご夫婦で孫の面倒を見ているそうだが、奥様は認知症にかかっていて、孫とは振袖の話などしていないから欲しいのかどうかわからないそうだ。周囲の人と同じような成人式を迎えさせたいのだが・・・とのことだった。
テレアポをしていると、いろいろな家庭の事情を垣間見ることになる。

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