きもの選びは友達探し、あなたの笑顔に癒される by かずまさ

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第882号 2015年10月9日「感謝してます」

月に一度、京都に行く。振袖21グループの会合に出席するためなのだが、夜の会食まで付き合うと、泊りになる。ほとんどの方は、日帰りで済ますのだが、目の悪い私は、夜道の移動を控えている。
皆、知った人ばかりなので、誰かしらホテルまで送ってくれる。いろいろな人にお世話になる。
ホテルでは、ビュッフェスタイルの朝食であっても、そこの係の人がテーブルまで食事を持って来てくれる。タクシーも呼んでもらって、運転手さんの肩を借りて乗車する。
知らない場所への移動は、他人(ひと)に頼るしかない。転んで怪我でもして迷惑をかけるより、周りの人に理解していただいて、肩を借りた方が問題が起こらない。たくさんの人の親切に甘えるしかない。
新幹線に乗るのにも、他人に聞いて移動し、階段は手すりを持ち、段ごとに貼られている光るラインを見ながら、一歩ずつゆっくり上り下りする。何度も行っている京都駅でも、たまに迷子になったりしながら、その都度、通りがかりの人に聞きながら移動する。
目的地に着いたら、必ず、自宅や会合でお世話になった人たちに、無事に到着したことを電話で連絡する。日々、たくさんの方々に甘えながら生活しているのだから、そのくらいのことはしなくてはいけないと思っている。
特に、今回の京都行きは、いろいろな人たちの親切に遭遇した。おそらく、その多くの人とは、二度と会うことはないだろう。
自分は、今までの人生の中で、そんな行いをしてきただろうか?ふと、そんなことを考えた。感謝感謝である・・・そう思う。

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第881号 2015年10月2日「いつの間にか65才 No.2」

88110月に入り、朝夕は気温も下がって、すっかり秋らしくなってきた。
9月の連休は、シルバーウィークというそうだ。敬老の日が含まれいるから、この期間中に墓参りにでも行ってらっしゃいと言う意味も込めているのか?それはわからないが、あちこちの高速道路は渋滞したようだ。
私共の店は営業していたので、この機会に重点的にテレアポすることにした。これから成人式を迎えるお嬢さんがいるご家庭に、電話をかけまくった。
多くは留守だったが、在宅の中で特に気づいたのは、男性やご老人の多いこと。この方々は、決まって『嫁と孫で相談しているようだ。』と答える。彼らは、振袖選びの会話に入っていないのだ。寂しい話だ。正直屋では、家族写真も撮ることをお勧めしているが、家でその話もされない嫁や孫もある。家族共同体ではなくなっている。
テレアポしていると、いろいろな家族模様を垣間見ることになる。お祖父さんの、『わからん』は納得できるが、お祖母さんの『嫁が決めるから』や『実家で相談しているようだ』という答えは、少し悲しい気持ちになる。長年の共同生活の中で生まれたルールのようなものがそうさせてしまったのか。
いろいろなことを考えるようになったのは、今年の前半、親しくしていた知人の訃報が続いたことや、『いつの間にか65才』を越え、シルバー世代に突入したこと、サラリーマン生活を過ごしてきた同級生たちが皆リタイアしたことからきているのか?年を重ねることは、悔しさを知ることなのかな?そんなに早く走れない、重い荷物が運べない、なんてことは序の口だな。
だからこそ、最近、新しいことにチャレンジすることにした。それは、ホームページの改造だ。最初から作り直すのは、これで4度目。自分がインターネットを使いこなせていないために、諦めて我慢していたことを、もう一度見直すことにしたのだ。
吉と出るか凶と出るか、良いも悪いも自分で決断したこと。後は手を合わせるだけ。

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第880号 2015年9月18日「着たくなる日 No.6」

昔は、決まったお祝い事に対して、一年も前から着物の準備を始めたものだ。まずは生地を選び、着る時期に合わせた柄を考案し描かせた。
時が過ぎ、着物がよく売れた頃は、染め上がった着物の中から選ぶ時代へと変化した。いろいろなブランドや作家が現れ、競い合って作った。
これからは、アメリカ風に変化した時代となりつつある。ワンナイトパーティードレスとか言うそうで、一晩しか着ないから安価なものでいいらしい。買うまでもなく、レンタルかな?着用する品にそれほどの愛着を持たないようだ。
着物は、何度でも作り直せるように、直線縫いで仕立てる。単衣(ひとえ)、袷(あわせ)、綿入れ、すべて同じ生地で、奥さんが一晩で縫った。大人は3丈(じょう)、子供は1丈5尺(しゃく)、幼児は1丈、すべて同じ生地でお下がりをして作り直した。着物は、それほど大切に利用し扱われたのだ。四季のある日本だからこその使い方だった。
それだから、生地が織り上がり、図案が出来上がり、染め上がり、仕立て上がりというように時間をかけて自分の着る着物が出来上がっていく過程を見ているのもひとつの楽しみだった。着物だけではなく、帯や小物類すべて揃えるまでのたくさんの楽しみもある。この着物を着た時の自分の姿を想像してみる。だから『着たくなる』のかな?
これからの日本人に、『着物を着たくなる日』は訪れるのだろうか?着物の楽しみ方を教え、味わってもらう。そんな話が出来る語り部たちが育ってくれるといいですね。

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第879号 2015年9月8日「映画」

定休日の唯一の楽しみは、映画鑑賞だ。とはいうものの、実は、定休日に注文品の仕入れ等で問屋廻りをしているので、休日とは名ばかり、なかなか時間に余裕がない。
今は、大きなショッピングセンターには、食料品店はもちろんのこと、専門店街のほか、映画館やらスポーツ施設やレストランなど何でもあり、とても便利だ。一週間分の食料の買い出しをしがてら、時間が合えば映画を見る。駐車場も広くて、おまけに無料ときているから何時間いても駐車料金を気にしなくて済む。
この前は、『ミッション・インポッシブル』の新作を見てきた。現実離れしたストーリー展開に加え、目の悪い私には見づらい場面も多く、見ていてもわからないことだらけだった。そんな中で、一番印象に残ったことは、新しい武器はIT関連のものばかりだったということだ。
もうひとつのスパイ映画、昔のボンド(007)映画をみても、必ず登場するのは美女、そして新しく開発された武器だった。ボンドが携帯する武器や乗り物など、新シリーズには必ず最新の武器が登場し、それが楽しみでもあった。
奇想天外な武器ではなくIT機器となると、現実味を帯びてくる。現代社会でも、操作方法やパスワードの解読等、問題点が多発していて、しょっちゅう新聞等で話題になっている。
我々に関係したことでは、名簿の流出。当店でも、名簿を購入してそれを利用しているが、一般に出回っていない、我々では入手できない名簿を利用してDMを送ったり、テレアポをすればヒット率は高くなるのだろう。徹底した管理で、解決していってもらいたい問題だ。
我々の知らない世界が広がっている。そこには、常にお金が関係しているのも事実だろう。恐ろしい時代だ。

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第878号 2015年8月31日「クレーム」

20年ほど前、個客から、お嬢様のご主人用にと、白大島の上下ほか、着用に必要な品一式すべてを揃えると、いくらかかるのかというお問い合わせがあった。最高級品の見積もりだ。150万円ほどかかるであろうとお話ししたところ、ご注文いただけたので納品した。
それから半月ほど経ったある日、その個客から電話がかかってきた。私が納めた品が、他店では20万円で購入できるというのだ。それも、大島では有名なお店だという。
大島といってもいろいろある。どのような品かチェックもしないで答えられたのだろうか?個客は、興奮されていて、私の説明など耳に入らない。『白大島の切れ端に、生産地や作者等のシールが付いているから、それを大切に保管しておいてください。』とお願いするだけだった。
20年が過ぎた。再会の第一声は、『嘘つき屋か!』だった。20年前と同じだ。『こんな客とは話をしたくない』、そう思った。
自分の販売した品に対する自信は、今も変わらない。男物の白大島、もちろん本場大島、120亀甲。現在でも、そんな品が存在するだろうか?長襦袢も羽織裏も手仕上げ、雪駄(せった)も畳表の三枚重ね、そんな品だ。
私の記憶の中では、悔しい思い出として残っているので、話をするうちに、当時の思いがどんどん蘇ってくる。20万円だと言った店の方を信用した客だ。お互い若かった。あれ以来、話もしていない。だが年は取った。
どこかでも、この切れ端の話を聞いたのか?、私をもう一度試したかったのか?、まだ何か言いたいことがあったのか?、本当に調べたいのなら、産地へ行って調べたらいいのに。デパートで聞いて、答えられる人、わかる人がいるだろうか?今さらという思いで説明した。
今頃になって調べる必要もないということは、本人もわかっていたことだろう。最後は、『ありがとう。』で終わった。私も若かったのかな?
しかし、いい加減に答えてしまう同業者がいることは、とても残念に思う。

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第877号 2015年8月19日「着たくなる日 No.5」

877『着物業界にいながら、商品の変化に気づかないとは、我ながら情けない』と、この夏、気づかされた。
浴衣が若者に人気で、よく売れているというのは好ましいことなのだが、そのほとんどは安価なプレタ(仕立て上がり)浴衣。柄は、ほとんどが花柄。トンボ文様もあるにはあるが、どの商品を見ても、よく似た柄ばかり。昔ながらの粋な伝統柄で染め上げられた品など、めったに見かけない。染も※注染(ちゅうせん)ではなくプリントだ。
私が、この業界に足を踏み入れた頃、まずは伝統柄を覚えることから始めた。柄の種類を覚え、接客時に、その商品の柄を説明できることに商売人としての誇りのようなものを感じた。先輩から教えてもらったり、業界紙を購入しては、染め方や柄の名前を覚えたものだ。
『青海波(せいがいは)』という文様は、重なり合った半円で波を表している。波は永遠に続くもの。『穏やかな生活が、ずっと続くようにとの願いが込められているので、子孫繁栄の意味も含めて、とても縁起の良い柄なんですよ。』と勧めたりもした。その柄の『いわれ』なども説明することが商いの基本と考え、必死に覚えた。
それは、現在でも通じることだと思うのだが、従業員の接客を見ていても、そんな会話は出てこない。『カッコいいですね。』とか、『いい色ですね。』くらいだ。残念ながら、柄や生地、染め方の勉強をしてこなかったから説明できないのだ。我々が教えてこなかっのも悪いのだろう。
伝統柄が消えていく。もっと我々年代の者たちが、若者が興味を持てるよう教えていかなくてはいけない。それが、『着たくなる日』に繋がっていくのではないだろうか?そう感じた。
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※注染(ちゅうせん)
染色する場所の周囲に特殊な糊で土手を作り、その中に染料を注ぎ込む技法。
何枚も重ねた生地の上から染料を注いで染めることから、このように呼ばれるようになった。

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第876号 2015年8月16日「着たくなる日 No.4」

5月から書店販売されている振袖BOOK『着たくなる日』を、当店では、8月初めから資料請求のお客様に送り始めました。一度、書店等でご覧ください。ご希望の方には差し上げています。フリーダイヤル 0120-39-0529 にご請求くださればお送りします。商品は、パソコンやスマホでもご覧いただけます。『振袖正直屋』で検索してください。
掲載商品も、染め上がったものから順次入荷しております。一地区一枚の販売なので、早い者順です。気になる商品がありましたら、お早めにお問い合わせください。特に、人気のマギー柄は、早目の試着をご検討ください。
夏休みは、第2回目の振袖チェック期間と言われています。振袖取扱店から、たくさんのDMが届いていると思います。振袖を見に行く前に、まずはそれらのカタログを入念にチェックし、色、柄のほか、値段、特典、サービス内容をよく研究してください。
その次に、気軽に試着できる店を探しましょう。ベテランは、早くてきれいに着装しますし、着付のポイントもよく知っています。夏の時季なら、浴衣の着付をお願いして、その店の着装技術をテストしてみるというのも一案かな?着物好きは、着物のことをよく知っています。体形によって少しずつ異なる着装のポイントを、そんなベテランから聞き出しておくと、とても参考になるでしょう。
最初に、色、柄、予算を決めてから振袖選びをしましょう。迷いだしたら、一度白紙に戻して、自分の好みをチェックし直してみること。あれも着たい、これも着たいと思っても、当日着られるのは1枚だけなのですから。

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第875号 2015年8月10日「暑いですね」

この異常な暑さは、いつまで続くのだろう?
昼間は、暑くて外に出られない。商いどころではない。夜は、クーラーで部屋を涼しくしておいてから寝るのだが、暑くて夜中に目が覚める。そうすると、もう一度、クーラーを入れて寝る。タイマーをセットしておけばいいではないか?と言う方がいるが、いつも同じ状況で寝ているわけではないので、毎日タイマーをセットし直すより、暑くて目が覚めた時に、クーラーをつけるようにした方が体には良いと思っている。
酒を飲んだ日は、よく眠れるので毎日そうしたいところだが、そんなことをしていたら、また血糖値が上がってしまうだろう。近頃は、腎臓をチェックする数値も少々高いと医師から言われているので、仕方なく酒の量を控えている。
『着物は涼しいでしょう?』と言われることがあるが、『今は何を着とっても暑いわ!』と心の中で叫んでいる。さすがにお客様にそんな言い方はできない。ほとんど毎日、浴衣を着用するようになった。病院に行くと、着物好きの方から『結城ですか?』と尋ねられることがあるが、『浴衣です!』と答えている。毎日着用される方が少ないから、区別がつかないのは仕方のないことだ。良い品に見ていただき、お世辞だったとしてもうれしい。
まだしばらく暑い日々が続きそうです。お身体をおいたわりください。
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【お盆休み】
8月12日(水)~14日(金)
鶴舞本店のみ、事前予約いただければ商品をご覧いただけます。

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第874号 2015年7月29日「着たくなる日 No.3」

童話が好きで、童話づくりの店を開いた人。蕎麦(そば)好きが高じて、蕎麦打ちするうちに店まで開いてしまった人。豆腐屋に生まれ、豆腐のフルコース料理を考案した人。その店は、コーヒーまでも大豆を原料としたものを提供してくれる。共通するのは、『好き』という言葉。
我々は、自分の仕事に愛着を持っているだろうか?彼らは、福を持って日々対応しているから、自然と笑みが生まれ福顔になる。オギャーと生まれた時から死ぬまで、ずっと福顔の人なんているはずはない。そのような顔でいられるよう努力した結果だろう。好きな仕事を持ち、自由に楽しんで日々暮らす。そんな生活が出来ればと願う。
仲の良い夫婦は、空気のような存在の間柄と言われる。文句や注意をされてもケンカにならない。腹が立たない間柄。私は、そんな人間にはなれない。日々の生活の中で、あきらめの境地かなぁ・・・。
『着たくなる日』-そんな日があるだろうか?私は、毎日着物を着てはいるものの、休日には着ない。仕事だから着ているのか?当たり前のようにしていることを、ふと立ち止まって考えると、『なぜ?』という疑問が湧いてくる。『毎日着物を着なくてはいけない!』と誰かから強制されたわけではない。いつの間にか、そうすることが習慣になってしまっただけのことだ。着物屋なのだから、着物を着ていないよりは着ていた方がいいとは思う。
着物を着たくなるということは、夫婦の関係とよく似ている。言えてることは、難しいということ。

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第873号 2015年7月22日「着付について No.2」

873先日、着付を習っているというお客様が、お母様から譲り受けた着物を持って来店された。通っている着付教室の先生に、着物の寸法が自分に合っていないから綺麗に着装できないのだと言われたらしい。寸法直しをしたいとのご注文で、身巾が、袖付が、裄が、等々、細かい指示だ。
取りあえず、女房が、その着物をお客様に着せてみた。身巾や身丈は腰ひもの位置をこのくらいにして、上前や下前の位置はお腹まわりに合わせてこのあたりに、といった具合に調整しながら着せてみたところ、きれいに着装できた。年齢と共に、お母様と同じ体形に変化していたということか?まあ、そのあたりのことには触れないこととして、ただ、裄だけは今の人のほうが少し長めなので、そこは直すことにした。他の箇所については、着方の工夫で済んでしまうのだ。着付の先生が、そんなこともわからないのか?と女房が不思議がっていた。先生自身、毎日は着物を着たりしないからか?
私も近頃、年のせいで背が縮み、階段等で裾を踏むようになった。『猫背だからだわ。』とか、『もっとシャンと着なさい!』と女房に注意される。お腹も出てきたから、前巾も合わなくなってきた。だから、着る時に少し調整して着るようにしている。しかし、いちいち直しているのも大変だ。自分で着物に合わせるしかない。毎日着ていれば、自然とそれなりに着られるようになる。その辺のこともわかって、先生は指導しなくてはいけないと思う。
お金さえ出せば、寸法を直すことはできる。しかし、その寸法は、本当にその人の体に合ったものなのか?毎日のように着用していた昔の人たちからみれば、ただのクレームにしか聞こえないかもしれない。考えたら恐ろしい話だ。

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