第873号 2015年7月22日「着付について No.2」
先日、着付を習っているというお客様が、お母様から譲り受けた着物を持って来店された。通っている着付教室の先生に、着物の寸法が自分に合っていないから綺麗に着装できないのだと言われたらしい。寸法直しをしたいとのご注文で、身巾が、袖付が、裄が、等々、細かい指示だ。
取りあえず、女房が、その着物をお客様に着せてみた。身巾や身丈は腰ひもの位置をこのくらいにして、上前や下前の位置はお腹まわりに合わせてこのあたりに、といった具合に調整しながら着せてみたところ、きれいに着装できた。年齢と共に、お母様と同じ体形に変化していたということか?まあ、そのあたりのことには触れないこととして、ただ、裄だけは今の人のほうが少し長めなので、そこは直すことにした。他の箇所については、着方の工夫で済んでしまうのだ。着付の先生が、そんなこともわからないのか?と女房が不思議がっていた。先生自身、毎日は着物を着たりしないからか?
私も近頃、年のせいで背が縮み、階段等で裾を踏むようになった。『猫背だからだわ。』とか、『もっとシャンと着なさい!』と女房に注意される。お腹も出てきたから、前巾も合わなくなってきた。だから、着る時に少し調整して着るようにしている。しかし、いちいち直しているのも大変だ。自分で着物に合わせるしかない。毎日着ていれば、自然とそれなりに着られるようになる。その辺のこともわかって、先生は指導しなくてはいけないと思う。
お金さえ出せば、寸法を直すことはできる。しかし、その寸法は、本当にその人の体に合ったものなのか?毎日のように着用していた昔の人たちからみれば、ただのクレームにしか聞こえないかもしれない。考えたら恐ろしい話だ。