第961号 2021年4月27日「IT」

ITの進歩は素晴らしい。特にこの1年、コロナの影響でインターネットを利用した買物が急速に進んだ。HPを見て注文すれば、当日か翌日には届くし、時間指定までできる。衣・食・住にわたり、店舗に足を運ばなくても、欲しいものが手に入る時代になった。
スマホが1台あれば、テレビは見られるし、座ったままで部屋の環境チェックまでできる。冬でも、部屋の設定温度を快適にしておけば、季節ごとの衣類を持つ必要がなくなる。これは室内に限った話だが、そんな大きな空間を作れば、衣の生活環境はずい分変わる。毛皮のロングコートが現在必要なくなったように、生活環境は、人の手によって、どんどん変化してきている。
現時点で、ITは、欲しい商品を画面上で見ることはできるが、現物を手に取って、その品の硬さや柔らかさ、香りなどを確認することはできない。食品の美味しそうな香り、オーデコロンの甘い香り、汗の臭い、熱い、冷たいなど、人が日々の生活の中で出合うあらゆる感覚が、ITの進化で体感できなくなってしまったら、この世はどうなるのだろう?
機械なら、同じものをいくつでも作ることができる。だが、職人が作ったものは、より近い作品ができたとしても、まったく同じものは作れない。機械で作ったものに飽きた人は、いつかまた手作りの品を求めるようになるだろう。その時には職人はいない。過去の作品だけが残っていることになる。

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