第735号 2013年7月5日「着物のこと」

『着物とは、直線縫いで作ってあるんだ』ということを実感するには、着用した着物を、一度、自分でたたんでみるとよくわかる。どこかの部分が膨れ上がったり、変に折れ曲がったりしない。裾(すそ)からたたんでも、袖からたたんでもいいが、慣れてしまえば簡単だ。
だから、着物というのは、布さえ余分にあれば、リフォームは簡単なのだ。例えば、袖を破ってしまったり、タバコの火で焦がしてしまったりしても、布さえあれば、また新品のような状態に戻る。
男物などの場合、大島紬1疋(ひき)という品は、長さが6丈(じょう)あり、着物が2枚作れるだけの長さがある。これで着物と羽織を作るなら、5丈5尺(しゃく)必要で、5尺余ることになる。この残り布は、先に述べたような時のために取っておくとよい。
洗い張り(着物をほどいて一反の生地に戻し、きれいに洗ってから、また元の形に仕立て直すという作業)をするのであれば、仕立て直しをする際に、前身と後身を反対にすれば、汚れや破れで傷んでいる箇所を隠すことができる。
現在は、安価で何でも購入することが出来る幸せな時代だ。でも、日本人は、1枚の布を工夫して、何度も何度も作り直して着用してきた。着物を着用した折に、着物とはこんなに便利なものなのだということを、思い返してみるのもいいのでは?

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