第609号 2012年3月13日「昔の話-私のこと No.3」
何もわからないまま時は過ぎた。
仕入れは番頭について行き、値段のチェックをしてもらった。私が奉公した店は神戸にあり、高級呉服のお店だった。正直屋は中級より少し上のお客様が多く、選品も関西風どっぷりだった私は正直屋好みが理解できず、ずいぶん損をした。当店は、仕入れると日にちをチェックして、古くなればディスカウントするという店なので、仕入れ方の『目利き』は絶大だった。仕入れては損をし、また仕入れては損をする毎日だった。番頭のほうも大変だった。新しい店を出店し、新しい客作りが大変だった。全員が借金返済に夢中だった。
少しずつ名古屋風が理解できた28歳の年末に結婚した。女房は私以上に名古屋弁に泣いた。現在は普通に名古屋弁で話すが、当時は会話で苦労したようだ。友人も名古屋には誰一人とおらず、厳しい毎日だった。