第989号 2024年4月19日「古着売買について No.2」

私が正直屋で働くようになって48年が過ぎた。初めは、商品知識も乏しく、固定客のサポートなどできるはずもない。やることもないので、広告チラシを多めに印刷してもらい、成人名簿のお客様廻りを始めた。畳紙(たとうし)・文庫を見れば、その店の歴史がわかる。その頃の正直屋の畳紙には、当時、南区にあった大磯店の名が印刷されていた。
商いのほうも、年季を積むごとに取り扱う商品の種類も増えていった。主にやっていたのは、娘さんの『こしらえ』だ。娘さんの結婚式に着るために、ご自分の晴れ着も一緒に購入されるお客様もあった。ほかにも、着物好きな奥様や接客業の方、それに先輩から引き継いだお客様の対応もした。
お客様から古着を処分したいので見て欲しいとの依頼を受けることがある。多くは、お母様から譲り受けた着物のように見受けられる。ウール・綿(めん)・麻・ナイロン等の石油製品の常着が多いように思う。
高度成長期は、着物を着て観劇や旅行に出掛ける方もたくさんおられた。今では、買ったまま畳紙に入れっぱなしで、風を通すこともなく眠ったままの着物もたくさんある。日本人は裕福になった。

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