第857号 2015年2月9日「着物のこと No.6」

近ごろは車社会になり、羽織や道行コート姿を見かけることが少なくなりました。車で移動するから、少々寒くても必要ないのでしょう。
ホテルで行われる結婚式等では、ホテルで着付けてもらって式の間だけ着装し、終わればまたそこで脱いでくるわけだから行きも帰りも洋服です。違うのはヘアとメイク。普段と変わらない洋服姿にド派手な髪形。中年女性にとって、そんなことはお構いなし・・・などと書くとお叱りを受ける。
成人式の若いお嬢さんは、ここが違う。二次会用のパーティードレスのことも考慮して、洋装にも和装にも合うスタイルにされる。そして、髪飾りを工夫したり、付け替えたりしている。さすがです。
私としては、出掛ける時から帰宅するまで、つまり、二次会でも振袖姿でいて欲しいと願うのです。せっかく高額な振袖を用意したのに、前撮りと当日3時間だけでは何とも悲しい。長時間着装されることで、日本人として着物を身体でも感じて欲しいのです。
『日本人=着物姿』と考えるのなら、本当は自分で着れるようになっていただきたいのですが、現在の着付教室は、まるで物売りの教室のようになってしまった。とても残念です。
道具を使用しないで気軽に着るには、やはり着慣れることしかないのです。方法としては、お茶・民謡・能など、和の作法を学べる教室やグループに参加することです。
和食や和紙が世界文化遺産に認定され、『さあ、次は和服だ!』などど考えるのはおかしいかな?毎日の生活の中で着物を着て、和食やお茶・花を楽しみ、時には歌舞伎・浄瑠璃・能・相撲等、日本古来の芸能を堪能するのも楽しいですよ。お金のかからない楽しみ方なら花見でしょう。桜・アジサイ・菖蒲・・・いくらでも着物を着る機会はあります。日本人として、そんな時間を作ることが出来れば心遣いも生きてきます。その場しのぎの着装では、きちんとした『おもてなし』にはなりません。

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