第841号 2014年9月16日「お客様 No.4」

841番頭のお客様を引き継ぎ、店長として商いを始める時に、番頭から言われたことがある。
『商品知識も対話能力も未熟なお前に渡しても、難しい客ばかりかもしれない。だが、何を言われても相手に合わせ、頭も下げ、その客から売上を作らなくてはいかん。まずは、自分のお客様にすることだ。お前のレベルが低ければ、いくら社長の息子であっても、客のほうから離れていく。』と。
番頭から引き継いだお客様は、今でも自分の主たる顧客で、三代にわたって可愛がってくださっているお客様もある。
その家族が、いかに着物好きであるかということがわかる。何かしらの行事には必ず着用し、普段でも時折着装される。お茶会だったり、お花見だったり、観劇だったり。ほかにも、着物を着てあそこの景色を見たい、この店で食事をしたい、家族みんなでこんなことをしたい。そんな時間を作って、着物を着ていただいている。
昔のお年寄りのように毎日着ているわけではない。着装シーンを自らがイメージして、作って着られるから出来ることだ。きれいに着装したい。お金が掛かってもいいのだ。そんなムードの中の自分に浸りたいからだ。
それには、時間もお金も知識も必要だ。加えて、心の余裕もないとこんなことはできない。世の中、そんな人たちがたくさんいるのも確かだ。
テレビや新聞等では毎日イヤな事件の報道ばかり。そんな世界は見ない方がいい。『想像の翼を広げて』・・・NHKのテレビドラマの言葉の通り、もっと広く楽しいことを考えられる、余裕のある人間にならなくてはいけない。

ページの頭に戻る