第884号 2015年10月23日「今どきの商い No.3」

仕事は好きじゃないと続かない。65才の今まで、私はそんなことを考えたことはなかった。
丁稚(でっち)奉公先で、接客の折に恥をかくのは自分自身だと考え、最低のことくらいは知っておかないとと思い、専門書を買って読んだものだ。好き嫌いではなく、当たり前のことだと思ってやっていた。
ところが、時代はそうではないらしい。商品知識などなくても、勉強しなくても、勤められるのだ。私が甘いからかもしれないが、何も覚えようとしない。我店でそれを痛感した時、さすがに悲しくなった。お客様に、『かっこいい!』 『可愛い!』を連発するだけではだめなのだ。
悲しい現実を突きつけられて、目が悪いばかりに自分で商いができないことを歯がゆく思った。目の良かった頃は、商談の輪に入れた。柄や生地の講釈もできた。お客様が知らないのは当たり前として、従業員も勉強不足でわからない。だから、詳しい商品説明をしない。どうせレンタルだから?・・・ちょっとおかしくないか?そう思うようになった。我々は、この商いで給料をいただいているのだ。
やはり基本は、着物好きかどうかということだ。着物を着たいと思わない人に、着物の話を向けても伝わらない。着物好きの人には、もう一歩踏み込んだ話をしないと満足してもらえない。
『着物っていいね!』と心から言える従業員を育てる。そんな店にしたい。
もう一度、1から始めよう。まずは自分から。

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