第622号 2012年4月27日「弟」

私には弟がいて、平成21年12月3日までは、兄弟できもの業を営んでいた。
彼は千葉のK店という振袖専門店で修行をしてから正直屋に帰り、私と同じように跡を継いだ。皆に可愛がられて育ち、商いもとても上手だった。
K店にいた頃は、テレアポで売上を作っていたのに、正直屋では、当時、その方法では商いをしていなかった。親父が新しいやり方を認めていなかったのだ。
それを感じ取っていた私と同じように、名簿を携帯しての飛び込み営業が始まった。商いは上手なのに飛び込みは下手だった。まずは、ポスティングと訪問により自分を売り込めばいいのだが、会話が上手すぎたのか?お客様への受け答えはとてもいいのだ。私もそうだったが、『商売屋の息子は口が上手だからね』とよく言われた。仕方がない。息子としての試練はいくつもある。しかし、反対にメリットもたくさんある。
私も弟も、正直屋という看板は、一生背負って生きていかねばならない。

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