第486号 2010年11月19日「お客様」

40年間きもの屋の商いに従事し、たくさんのお客様に出会いました。その中に、毎年名入れタオルをご注文くださったお客様がありました。年末の挨拶の折に配るとのことで、社名を入れ、タオルの重さも指定され、番頭がいる頃から何年にもわたって注文されていました。番頭から引き継いで私が毎年伺うようになったのですが、商品の納品時、数のチェックは当たり前ですが、熨斗(のし)紙のチェック、タオルの印刷のチェック、そしてタオルを10本ほど秤(はかり)にかけて重量のチェックをされる・・・厳しいのです。当然、当店がすべきチェックなのですが、さすが重量についてはメーカーを信用しているからしていません。お客様曰く、『何グラムから何グラムまでが注文した品の範囲』というのなら、その一番重い品でお願いするというのです。どの品をチェックしても、たいがいその重さの軽いほうの品となるわけで、そうなると1ランク上の品を納品しなくてはいけなくなります。値段の話の際は、見本タオルと詳細な値段の見積もりを持参するのですが、そこでも厳しくチェックされます。当然のことなのですが、大変勉強になります。タオルの種類、染色方法など、その都度教えをいただき感心しました。現在は他の品に替えられましたが、懐かしい思い出のひとつです。

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