第47号 2005年6月27日 「袖に込められた願い」

 「衣」を考える場合、その国の風、土、美意識なども忘れてはならないポイントだ。
日本は非常に湿度が高い。日本の湿度・温度を考えて通気性を促進するようにきものは考慮された。
洋服の袖丈ときもの袖丈では、呼び名は同じであっても本質的に意味が違う。きものの袖丈は、袂の長さであり、洋服でいう袖の長さに当たる部分は袖幅と呼んでいる。袖のその空間に神を呼び込み、神と一体となって生きていこうとしてきた日本の心があると考えられる。その心が、衣であるきものに表現されたのである。袂を振るということは、そのまま相手の幸福を願うという魂振りの動作になり、袂が長いことはそのまま年齢との関わりを意味した。若い娘はいつまでも若くありたいと願い、花の生命力を柄にあしらい、よき伴侶を見つけて幸せになりたいと願い袖を振った。きものの袖は余分のようだが、この「間」「空間」があるからこそきものの美が演出できるのである。
『しきたりの文化論』より抜粋 北原猛著

日本のことわざに「袖触れ合うも他生の縁」「ない袖は振れない」「袖を濡らす」というのがあります。このように日本のきものは、日本風土、美意識から生まれたのです。

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