第915号 2017年8月29日「着物のこと No.8」

915現代人は、着物といえば絹(シルク)を想像する。その時点で、『着物は外出着である』というイメージが底流にあることがわかる。常着にシルクを着られる人は、よほどのお大尽ぐらいしかいない。
まだ着物を着用する人が多かった時代、夏は綿、冬はウールというのが庶民の着用する素材だったと思う。現代は、その素材が、ナイロンやポリエステルに取って代わられた。石油製品だから、特に冬は暖かい。また、洗濯に強いので、夏に汗をかいたら、何度でも洗えばよい。
本来、日本は、四季の変化のある国だから、季節ごとに着る素材を変えればいいと思うのだが、時代は、そんな面倒を取り除くべく、素材開発に力を入れてきた。例えば、汗をよく吸う繊維だったり、着用すると暖かさを感じる製品。
昔と大きく違うのは、丈夫で洗濯が可能なことだ。洗濯機に放り込めばいいという品は、昔では考えられなかった。また、縫製も洗濯に耐えられるよう現在はミシン縫いだ。だから縫い直しができない。着物は、何度でも解(ほど)いて作り直しができるよう直線縫いで作ってある。時代は変わった。

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