第880号 2015年9月18日「着たくなる日 No.6」

昔は、決まったお祝い事に対して、一年も前から着物の準備を始めたものだ。まずは生地を選び、着る時期に合わせた柄を考案し描かせた。
時が過ぎ、着物がよく売れた頃は、染め上がった着物の中から選ぶ時代へと変化した。いろいろなブランドや作家が現れ、競い合って作った。
これからは、アメリカ風に変化した時代となりつつある。ワンナイトパーティードレスとか言うそうで、一晩しか着ないから安価なものでいいらしい。買うまでもなく、レンタルかな?着用する品にそれほどの愛着を持たないようだ。
着物は、何度でも作り直せるように、直線縫いで仕立てる。単衣(ひとえ)、袷(あわせ)、綿入れ、すべて同じ生地で、奥さんが一晩で縫った。大人は3丈(じょう)、子供は1丈5尺(しゃく)、幼児は1丈、すべて同じ生地でお下がりをして作り直した。着物は、それほど大切に利用し扱われたのだ。四季のある日本だからこその使い方だった。
それだから、生地が織り上がり、図案が出来上がり、染め上がり、仕立て上がりというように時間をかけて自分の着る着物が出来上がっていく過程を見ているのもひとつの楽しみだった。着物だけではなく、帯や小物類すべて揃えるまでのたくさんの楽しみもある。この着物を着た時の自分の姿を想像してみる。だから『着たくなる』のかな?
これからの日本人に、『着物を着たくなる日』は訪れるのだろうか?着物の楽しみ方を教え、味わってもらう。そんな話が出来る語り部たちが育ってくれるといいですね。

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