第838号 2014年9月2日「番頭 No.9」

今頃になると、決まって昭和34年9月26日の伊勢湾台風の話題が、テレビ等で報道される。間もなく55年が経とうとしている。当時、私は小学3年生だった。家が吹き飛ばされるのではないかという恐怖を感じたことは、今でもよく覚えている。
両親や従業員たちの台風との戦いを見た。もちろん家は木造建築だった。屋根の瓦が吹き飛ばされ、雨漏りというよりも、まるで滝のように雨水が落ちてきて、それを従業員がバケツで受けては外に出した。1階は、ヒザ下20cmくらいまで泥水が入り、あと少しで畳の上にまで達するところまで来ていた。
屋上に上がるための扉が吹き飛ばされないようにと、番頭が2人がかりで畳で押さえつけていた。妹たち3人は、階段の手すりにしがみついていた。親父からは、階段のところから動くなと言われていたが、家じゅうの人たちの格闘を、私はこっそり見て回った。
どの場面もすごかった。どの家庭でも、同じような戦いがあったと思う。当時は、番頭や従業員は住み込みで、私たち家族との共同生活だった。皆がいなかったら、どうなっていただろう。

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