第979号 2023年1月4日「新年のご挨拶」
第978号 2022年11月30日「祖父 奥田正直」
正直屋の創業者である祖父は『正直に勝る商いはない』という家訓を残した。私と同じように糖尿病で白内障、父に代を譲ってからも、日々、着物姿で店頭に座っていた。
来店されたお客様の声を聞き、『〇〇さんだね』と答えた時があった。自分のお客さんの声はわかるんだ…とビックリした。その頃、すでに目はボヤーッとしか見えておらず、お客様を見て、誰なのか判別することはできなくなっていた。
当時、私は大学生で、祖父母と同じ別宅に住んでいた。私はおばあちゃん子で、何かと祖母に甘え、祖母の近くにいることが多かった。小学生の頃は、祖父によく叱られた。毎日、祖母から愚痴を聞かされていたこともあり、祖父に対して良い印象は持っていなかった。
その祖母が、祖父の葬式の折に大泣きをしたから驚いた。あれだけ悪口を言っていたのに…逆の愛情表現だったんだ。当時はわからなかった。
祖父の死後、遺品から、いろいろな役職に就いていたんだなぁ、とか、お人好しだったんだなぁ、とか、私の知らない祖父の別の姿を垣間見ることができた。祖父母は、3人の子どもを育て上げ、戦争という暗く厳しい時代を生き抜いてきた人たちだ。家訓の重さを思う。
第977号 2022年10月31日「仕立屋さん」
50年も着物業界に携わっていると、時代の変化を痛切に感じる。50年前は着物もよく売れた。普段から着ている人も多かったし、昭和20年~40年代生まれの女性は、着物を作って嫁入り道具として持参される人が多かった。特に冠婚葬祭に着用する礼服は必ず作って持っていかれた。常着として着ていた人は紬や小紋など、いろいろな着物を作っておられた。
現在、着物を着られる方も減り、そうなると、着物を作る職人さんや仕立屋さんも減っていった。特に仕立は、仕立代金の安い海外仕立に移っていった。ゆかたなどは、わざわざ反物から仕立てるのではなく、仕立上がり品(プレタ商品)に変わった。毎日着用される人は、サイズにこだわるが、着物の知識のない若者たちは、サイズの合わないプレタ着物でも平気で着ている。
私がこの業界に入った頃は、毎日仕立屋さん廻りの仕事があった。振袖・喪服・ゆかた・ウールなど、商品の素材や値段によって仕立屋さんも分かれていた。ご自身で仕立のできるお客様などからは、いろいろと注文も多かった。
現在は仕立屋さんも減った。仕事が無いからだ。着装されれば洗い張りや仕立も出てくる。着装しなくなれば、その仕事も無い。仕方がない。
第976号 2022年9月12日「私の意見」
≪株式会社北白川書房 発行『月刊なごや』2022年8月号から転載≫
・・・・・
子どもの頃から、自分の家の庭のように親しんできた鶴舞公園。
2018年、陸上競技場があった場所に多目的グラウンド「テラスポ鶴舞」がオープン。翌19年には、名古屋市公会堂の改修工事が終わり、次は、カフェやレストランができるとか。
鶴舞公園には、昭和12年(1937)に東山へ移るまで動物園があったそうで、その名残りで私が小学生の頃は猿と鳥の飼育舎があった。スマホやテレビゲームなどがない時代、公園でよく遊んだものだ。すべり台やブランコでも遊んだが、夏には昆虫採集、魚釣り。夏休みが終わる頃には皆、日焼けして真っ黒になっていた。
また、鶴舞公園は花の名所としても知られていて、4月の桜から始まり、チューリップ、つつじ、バラ、菖蒲、紫陽花、蓮と楽しめる。子どもの頃には、そんな豊かな季節の移り変わりを感じられる場所であることに気づかなかった。
40歳を過ぎ、朝の散歩とラジオ体操を日課とするようになった。早朝のラジオ体操には100名以上もの高齢者が集い、大にぎわい。中にはジョギングをしている人もいる。
そんな素晴らしい鶴舞公園に対して、願っていることがある。それは、昔のようにトンボや蝶やバッタがいる公園に出来ないか?ということ。東山動植物園や熱田神宮には今でも昆虫たちがいると思うが、鶴舞公園では10年以上も前から見かけなくなってしまった。蝉だけは元気に鳴いているが、ツクツクボウシやチッチゼミの鳴き声は聞こえてこない。
トンボがいなくなった原因は、池の中にブラックバスなどの外来魚がいるからで、トンボの幼虫のヤゴや小魚を食い尽くしてしまったからだ。蝶がいなくなってしまったのは殺虫剤のせいだろうか?花には蝶、自然の中には昆虫たちがいてほしい。
子どもたちには、幼少期の体験として、虫取り網と虫かごを持って走り回る、夏ならではの遊びを味わわせてあげたい。
鶴舞公園を30年前の環境に戻せないかな!
第975号 2022年8月9日「残暑お見舞い」
第974号 2022年8月3日「好きなこと」
この夏も、ホームページの直しを行っている。キッカケは、思うような成果が上がっていないことと、若い社員からの提案があったからだ。『古い商品は削除したほうがよい』とか『スマホで見やすいレイアウトにしたほうがよい』、などなど。
とはいっても、なかなか商品を減らせない。どれも、その時、気に入って買取で仕入れたものばかり。売れなければ、センスを問われることになるが、仕入れた商品がすべて売れるわけではない。逆に、『こんな柄が売れるの?』ということもある。好みは人それぞれ、職人も売れない品を作るわけがない。仕入の難しさだ。
今まで、どれだけ失敗してきただろう。失敗があるから成功がある。恐れることはない。だが、自分が仕入れた品は、責任をもって売る努力はしなくてはいけない。初めから売る気のない姿勢で仕入をされては仕入方失格だ。
自分の店のお客様の好みを知ることは難しい。問屋さんの言われるままに仕入をしていたら、店の個性が出ないし、利益も出ない。仕入もホームページも同じだ。他店がこの方法で成功したからといって、我店のお客様もそれで喜ぶとは思えない。我店は我店の方法で、良いと思ったやり方でやればよい。
もうすぐ創業100年となる。創業50周年祭の頃は、まだたくさんの人達が着物を着用していて、着物がよく売れた。時代は変わったが、着物好きは今でもたくさんいる。そんなお客様を、もっと探して対応すればよい。キーワードは、自分が着物好きであること。それに尽きる。
第973号 2022年6月29日「IT No.2」
テレアポをしていると、『この電話はお受けできません』とか『録音します』とかいう音声が流れてくることが多くなった。迷惑電話対策をしているのだ。私の家の電話番号をどこで調べたのか?娘の名前も、成人年齢も知っている。住所も親の名前も・・・10年前ならビックリする人もいたが、現在はITの発達で、誰もが当たり前だと思っている。恐ろしい時代だ。
これは、電話だからまだいいが、歩いている時に知らない人からこんな声掛けをされたら恐ろしい。電話の場合、申し出があれば、名簿から削除し、二度と電話を掛けてはいけないと法律で定められている。しかし、現実は、相手もそれが仕事だから、人を替え、日にちや時間を変えて、同じ会社から何度でも電話が掛かってくる。
最近、若い世帯では固定電話の無い家庭も増えた。あったとしても、知らない電話番号だったら出ないと決めている。今の時代の対処法だ。私が小学生の頃は、電話のある家は少なかった時代だから、近所の人が店に電話を借りに来る、なんてこともあった。
今やスマホがあれば、テレビを見たり、ゲームをしたり、買い物したり、何かを予約したり・・・わざわざ出向かなくても、どこからでもできてしまう。本当に便利な時代だ。
だが、動かない分、体は衰えるだろうなぁ。何百年もすれば、人間の姿もずいぶん変わるかも。
しばらくは、せいぜい利用することとしよう。
第972号 2022年5月31日「ウォーキング」
しばらく朝のウォーキングをやめていた。腰が痛かったからだ。病院で、痛み止めの飲み薬と湿布薬を処方してもらい、湿布薬は腰にも足にも貼っていた。
『湿布薬は心臓に悪いらしいよ。』と女房が言う。テレビでやっていたというのだ。貼った時はスーッとして気持ちが良いが、痛みは治まらない。こういうものだと思って、貼り続けていたが、これ以上続けてもしょうがないと思った。多少痛みは残っていたが、貼るのをやめることにした。湿布薬は無駄だった。
久しぶりに歩く鶴舞公園は気持ちが良い。『久しぶりですね!』『元気になられたのですね!』と声を掛けられる。調べてみたら、7ヶ月間も歩いていなかった。
これまた久しぶりのラジオ体操で、硬い体を動かす。やはり痛い。足を引きずってでもいいから、また公園を歩こうと思う。
しかし、人間の体って、結構丈夫にできているものですね。二度と公園のウォーキングはできないと思っていたが、再開できて、とても嬉しい。
第971号 2022年4月25日「月刊なごや」
『なごや百選会』で名高い東海エリアの情報誌『月刊なごや』を平成25年から配布している。基本は来店客にだが、顧客や成人振袖対象者にも配っている。平成25年より前にも、何年か配布していたから、かれこれ10年以上利用していることになる。
この情報誌、タイトルの通り名古屋が中心なのだが、愛知県のほか、岐阜県や三重県のお店も載っている。飲食店の紹介が多いが、ファッションや人物紹介、名物、観光など話のネタになりそうな話題も多い。
配り始めたものの『着物屋』なのに…と疑問を持ち、中断していた時期もあったが、ここ何年間は続けていてよかったと思っている。4月号が474号だから、今年の10月には発刊40年になる。40年ものあいだ続けるということは、毎月の情報集めのみならず、いろいろと大変なこともたくさんあっただろう。
名古屋生まれの私でも、この情報誌を読んでいると知らないことばかり。最近では、次号を楽しみにしてくださるお客様も増え、嬉しく思う。40周年記念号はどんな特集を組まれるのか?今から期待している。
第970号 2022年3月28日「成人式」
4月から成人年齢が18歳に引き下げられる。名古屋では、今まで通り20歳で成人式を行うことが決まっている。成人式については、いろいろな場で議論されてきたが、着物業界にとっては良かったと思う。また、受験の時期と重なるので、対象者にとってもこのほうが良いのではないかと思う。
昔は18歳といえば、女性の本厄の年。『厄災が多く降りかかる年』とされていて、陰陽道が由来だとか。難しいことはわからないが、災いが起こることは避けたいから、お寺や神社で厄払いをした。現在は『厄』の話をする方は少なくなったが、早く振袖を作られた方は、厄払いのために振袖を着用されるとよいでしょう。
18歳成人にはいろいろな問題点がある。例えば、本人の意思で借金ができるようになる。『もう大人なんだから』『まだ子どもじゃないか!』人により意見は分かれると思うが『酒は20歳までダメ』というのもおかしな話かな?道徳教育が重要だが、それはすべて大人が教えるもの。我々大人がもっときちんとしなくてはいけないのかな?