第993号 2024年5月29日「古着売買について No.6」
長く着物業に従事していると、私が販売した着物を『買い取ってほしい』と言われることもある。とても悲しい気持ちになる。購入された時は、とても喜んで買われたハズなのです。『もう要らないから』と母親の着物を処分される方もある。これも、とても辛い。
せっかく買った着物を一度も着用されていない方に、それはなぜなのか聞いてみたいものだ。持つ楽しみや見る楽しみがあることは理解しているつもりだが、ぜひ着用していただきたい。ご主人や知人など、その姿を見たたくさんの人から、褒められ、羨ましがられた、という話を聞きたかった。着用されなかった着物が二束三文の値段で引き取られ、販売されていく。元の所有者の思い入れも知らず、お祓いをされることもなく、次の人は着られるのでしょう。喜んで利用されれば、眠っていた着物も日の目を見て輝くだろうか?