第977号 2022年10月31日「仕立屋さん」

50年も着物業界に携わっていると、時代の変化を痛切に感じる。50年前は着物もよく売れた。普段から着ている人も多かったし、昭和20年~40年代生まれの女性は、着物を作って嫁入り道具として持参される人が多かった。特に冠婚葬祭に着用する礼服は必ず作って持っていかれた。常着として着ていた人は紬や小紋など、いろいろな着物を作っておられた。
現在、着物を着られる方も減り、そうなると、着物を作る職人さんや仕立屋さんも減っていった。特に仕立は、仕立代金の安い海外仕立に移っていった。ゆかたなどは、わざわざ反物から仕立てるのではなく、仕立上がり品(プレタ商品)に変わった。毎日着用される人は、サイズにこだわるが、着物の知識のない若者たちは、サイズの合わないプレタ着物でも平気で着ている。
私がこの業界に入った頃は、毎日仕立屋さん廻りの仕事があった。振袖・喪服・ゆかた・ウールなど、商品の素材や値段によって仕立屋さんも分かれていた。ご自身で仕立のできるお客様などからは、いろいろと注文も多かった。
現在は仕立屋さんも減った。仕事が無いからだ。着装されれば洗い張りや仕立も出てくる。着装しなくなれば、その仕事も無い。仕方がない。

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