第963号 2021年6月29日「手作り」

コロナ禍ということもあり、この1年間で商いの手法もずいぶん変わってきました。ITを利用して物を売っている企業は、たくさんの利益を出しています。
最近は、高額な品までITを利用して購入する方もあり、今後の社会は、どうなっていくのだろうか?と疑問を持ちます。本来、人が快適に思ったり感じたりすることは、機械にやってもらうサービスではなく、人にやってもらうサービス、つまり会話から始まるものだと思うからです。
大量生産されて生み出される品は、確かに安心で安全で使いやすく、計算された良さが備わっています。しかし、それでは満足できない品もあります。流行のある品、個性的な品が、その部類に入ります。我が着物業界は、それに当てはまります。しかし、現実は、ほかの品と同様に計算された商品の開発に向かっています。そのひとつがインクジェットです。印刷だから精巧で、同じものを何枚でも作ることができます。欠点はありません。人の手による品の特長を強いて言うなら、『職人が作る品には味がある』などという言葉で表現されるものでしょうか?
今までの伝統技術が失われていきます。日本の着物業界は、何を残そうとしているのでしょうか?機械化されても、伝統工芸品の中には、今でも職人により作られており、人々に喜ばれ、使われている品がたくさんあります。
コロナ禍で、ITで物を購入する人が多くなりました。良い商品を大量に海外で作り、安価で届けられる。それが現代です。一部のお金持ちが物を作り、動かし、儲け、支配しています。ITが進めば進むほど、その差は広がります。

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