第941号 2019年8月26日「着物について」

10月から消費税が10%になる。またしても、その場しのぎの還元セール(プレミアムセール)で商品券の安価販売をする。残念ながら、その商品券を手に入れた方の中で、着物を購入される方は少ないと思われる。消費税が上がる前に買っておこうという動きは、以前ほどは見られない。今夏のゆかたの販売も低調だった。
2020年の東京オリンピックに向けて、『和』に対する関心は日ごとに高まっているように流通誌では語られている。しかし、昭和55年頃には1兆6000億円あった売上が、現在は2600億円まで落ち込んでいることを体感している私のような世代の者にとっては、いくら良いと言われても絵空事(えそらごと)のようにしか聞こえない。だいたい、この状況を作ったのは昭和10年~30年代生まれの我々なのだから仕方がない。
終戦後、衣食住あらゆるものが洋風化し、徐々にその弊害が表面化した。そして再び、古き良き時代の『和』のものが見直されている。失敗から学ばなければ成長しない。この何十年、日本人はそんなことを繰り返してきた。
もちろん洋風文化も良い点はたくさんある。それも踏まえて前進してきたわけだが、近頃、妙に昔を思い出すことが多くなったのは年を取ったせいか?自分の生きてきた約70年間は、女房の世話になることばかりではあったが、『良き人生』だという思いも強い。特に、昭和の時代はよく遊べた。よく儲かった。日本全体がそうだった。それが平成10年以降は、問屋さんもメーカーもバタバタと倒産した。閉店する着物屋も多く出た。
今後、日本人の生活がどう変化し、その中で着物がどう残されていくのか?着物を文字の如く『着る物』とするなら、『着用する物』として残したい。そう思う。

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