第926号 2018年5月22日「着物のこと No.12」

このたびの園遊会では、絞りの振袖が良かった。そして多かった。絞りで有名な名古屋のメーカーの品だそうだが、やはりテレビに映れば宣伝にもなる。業界の者なら、一目でどこのメーカーの品だとわかる振袖だった。
5月ともなれば、再来年の新作BOOKに掲載する振袖の柄選びも本格化。問屋さんも、一枚でも多く選んでもらえるよう、メーカーとの折衝の中で、良い柄選び、そして、少しでもお値打ちな価格で仕入れできるよう奔走している。
4月の選品会では、総絞りの振袖が良かった。昔からのイメージでは、この値段でこれだけの品がよく出来上がってくるなぁ・・・という感じだ。我々の業界も、これまでの商いの流れで、よい慣習は作られてこなかった。特に力のあるお店ほど、マネキン主体の押し売りや囲い込み、ローン販売に重ね売り。強引な商いをする業界に成り下がった。もちろん、きちんとした商いをされているお店のほうが多いとは思うのだが、業界紙を賑わせたお店ほど、たくさんの店舗を持つ大手であることが悲しい。
さて、この時季に着用するのは、正絹では単衣(ひとえ)、普段着なら紬がオシャレだ。若者の間では、ポリエステル繊維の品が、都会でよく売れているという。そして、それらを扱う専門店も出店している。石油製品だから暑いかもしれないが、まだ今くらいの時季なら、とてもいいのかもしれない。着物をオシャレ着として楽しんでいただき、年齢を重ねたら、もう一段階レベルアップして、日本古来からの伝統や民芸品に目覚めてくれたら嬉しい。夏物なら木綿から絹紅梅(きぬこうばい)、上布等、現在残っている産地を我々の世代が守っていかなくてはいけない。
まずは着物好きを増やそう!

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