第923号 2018年2月14日「着物のこと No.11」

20年も30年も前のものとなると、大抵の物はまず利用しません。機械物なら、動かないかもしれません。洋服で20年後も利用できるのは、サイズが変わっていなければ礼服くらいでしょうか?でも、着物は利用できます。理由は直線縫いだからです。何度でも寸法を変更できます。だから昔は親の着たお古を子どもに、子どもの物を幼児に作り直しました。
衣食住と言いますが、衣は、寒さや暑さをしのぐ為にどうしても必要なものでした。現代のように石油製品はありませんし、綿も絹も中国からの輸入品でした。その後、日本に綿の種子が渡来します。戦国時代以降、安価で作れる綿は、すぐ全国に広がりました。徳川幕府になり戦争がなくなると、米などの作物を安定的に作れるようになりました。戦国時代からの人口の増加は、綿の衣装のお陰もあります。
我々の知る歴史は、公家、武家、寺家の話であって、圧倒的多数の農民の生活は、あまりにも粗末で書物に残せるものではなかったのかもしれません。江戸、明治と庶民は豊かになっていきます。着る物も、何枚も持てるようになりました。直線縫いの作りは、洋服と違い着用しにくいものですが、作り直しが出来るという点では便利なものでした。

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