第790号 2014年2月18日「洗い張り No.4」

留袖の洗い張りを引き受けた。
紋のついた着物の洗い張りは、『紋洗い』 と言って、洗った後、もう一度きれいに紋を書き直さなくてはいけない。預かった留袖をよくチェックしてみると、黒い生地の色も、ところどころヤケが入って変色している。悉皆(しっかい)業者に相談してみると、結構、直し代金がかかるという。『解(ほど)き』の作業は、すでに店で終わってしまっている。儲かる仕事ではない。いい勉強になった。
昔、同じように預かって、洗い張りをした着物の仕立てが悪いと、苦情を受けたことがある。いろいろ調べてみたら、寸法が違っていた。従業員の勉強不足に呆れ、お客様に謝罪した。すると、お客様は、『寸法はいい。仕立てが悪いのだ。』とおっしゃった。着用すると、衽(おくみ)の先が少しはねるのだ。しかし、これは着方にもよる。台の上に置き、寸法チェックをすると、お客様のサイズには合っていないが、きれいに縫ってある。身巾は、広いなりにきちんと作られている。仕立ての状態などを説明したうえで、もう一度、初めからやり直しをさせていただきたいと申し出た。だが、お客様は、寸法違いの話が理解できない。私の対応も悪かったのか、腹を立てて帰られた。
前の店長夫婦も、年数だけは長かった。最終的には、何でも答えられる人材に育っていなくてはいけなかった。だが、日々の勉強を怠っていた。基本がわかっていなかった。クレーム処理は難しい。

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