第758号 2013年10月4日「洗い張り No.2」

従業員教育で、着物が直線縫いになっていることを教えるには、『解(ほど)き』をさせるのが一番だ。縫い糸を解くことで、着物がどのように構成されているのか実感できる。裄(ゆき)だとか衿(えり)、前・後巾、衽(おくみ)巾、等々、解くうちに着物のことがわかり、仕立て直し、つまりリフォームの話をしても納得する。
作務衣のような生活着には、長い袖はない。では、なぜ、他の着物は袖丈を長くしたのだろう?振袖のお客様には、『袖を振ることで、幸せのキャッチボールをするんだよ。』などと、魂振りの話をする。だが、真意は?争い事を鎮めるため、無くすためだと思うのだ。袖が邪魔になって、刀を振り回しづらいのではないか?そのあたりが本当のところか?
我々は、知らないうちに、袖がついているのが当たり前だと教えられてきた。袖がないほうが便利なのに。そんなことを考えるなら、直線縫いで作ってあること自体も不便だ。着物の当たり前の決まり事は、不便な事が多い。これ以上の話になると、業界の先輩方からお叱りを受けそうだし、私自身の勉強不足を指摘されることになりそうなので、もうよそう。
着物は、着慣れることが一番なんだ。着づらい品なんだということを頭に置いてから着装を始めれば、気軽に着物が楽しめると思う。

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