第724号 2013年5月22日「お好み焼きのSさん家 No.2」

久しぶりに、『お好み焼き屋のSさん』宅に伺った。といっても、お好み焼き屋はすでに辞めてずいぶん経つのだが、お元気そうでよかった。
着物の話をしたら、『もう着ないから処分した』という。あれだけ着物好きで着用もされていた方なのに・・・ビックリした。高齢になったのと、息子さんが嫁さんをもらう気もないので、残しておくと自分がいなくなった後に息子さんがきっと困るだろうから、というのがその理由だ。
ダンボール箱一箱数千円で引き取ってもらうのだそうだ。Sさん宅の品は『きもの好き』にとっては、とても魅力のある品ばかりだった。着物屋としては、聞きたくない話だ。しかし、これが現状。
こういう方々は、和風の洋服を着用されたり、持っている着物を、自分の体型に合わせたオリジナルの服に仕立て直しをされることが多い。動物性繊維である絹は、着用するには軽くて大変良い。ただ、採寸が難しく、仕立代も高額になるので、商いとして行うには、よほどの勉強が必要になる。我々『きもの屋』の課題のひとつだ。当店でも、一時期、安価でリフォームしてくれる仕立屋さんがいた頃は、何着も取り扱ったことがあったが、その方も高齢になり、現在は紹介していない。
今後、ますますこんな話を聞くことになるだろう。だが、私は、着物として着用してゆきたい。

ページの頭に戻る