第118号 2007年3月15日「昔の話 No1」

昔、毎日洋服を着ていた頃・・・『きもの屋なんだから着物を着なさい』と言ってくれた人が何人かいました。
その中でも一人印象の深い人が、レンタルブティックのお祖父さんです。もちろん粋な姿で毎日着物を着用されていました。その店では成人式当日は何十人ものお客様を、男性二人組みで手早く着付けされていました。
私が商いで本格的に伺うようになってから、10年間ぐらいは洋服姿だったので、10年以上に渡って着物のすばらしさを私に語ってくれた人でした。
商いでは商売も上手でしたし、買い方も上手でした。レンタル屋さんの中でも、ここの店は花柳界の芸妓さんなどもお客様であったので、高価な着物、帯も在庫に持っておられました。生活もダンディでしたが、なぜか私をよく可愛がってくれて厳しいおしかりも受けました。
『あなたはお客でもないんだから、出されたお茶やお菓子は全て食べ、飲んで行きなさい。失礼だろう!!』って言われたこともあります。
また商いでは『たくさんの商品を見せるのがサービスと思っているだろうが、その客の姿、話し方等を考えて、多すぎず、少なすぎない程度で満足させるのが商売だ。たくさん見すぎれば迷うし、予算より高ければいい品にきまっているが決まらない。』と言っておられました。
『どんな色・柄か、また予算を聞いたらその枠より少し高めまで・・・で商いをする、迷わせないように。レンタルといっても喜んで着てもらえば、又お客は来店される。』と・・・
時にはレンタル屋さんの諭す言葉で、悔しくて泣いて帰った日もあったけど、いい親父さんでした。

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