第64号 2006年5月16日 「きものと流行」

「着物なんて着ないから買わない、いらない」なんて言われるお客様がおられます。私は毎日着ているので必要なのですが、確かに現実は着用者が少ないですネ。
洋服という衣装が輸入されて大変便利で着やすいことから、だんだんと洋服に代わっていった時代背景を考えると、人が新しい品を必要とし、又便利さから洋服を取り入れていく・・・というのは自然なことなのでしょう。
いつも変わらぬ着用の難しい衣装(着物)よりも、着方の工夫をしなくても簡単に着られる洋服はとても便利でした。洋服は、着ることは簡単でもその衣装が常に変化するという、つまり流行が人を虜(とりこ)にしました。新しいもの欲しさの人を夢中にさせました。襟の大小、スカート丈の長短など、やはりその流行に合った洋服を着なくては時代に取り残されてゆきます。
その点着物は同じ着方で、仕立てもまったく変わりません。
流行と言えば柄の違いがあるぐらい・・・デザイナーズブランドの流行から、ある時代には特定の色のブランド品がよく販売されたりはしましたが、4~5年の流行のようです。もちろんブランド品でも長く人気が続く品もあります。
その点洋服のスタンスは毎年変化するスピード感。同じデザイナーでも毎年変化します。4年も着用できるのは礼服ぐらい?でしょうか・・・同じ物を身に包む、纏う(まとう)ことは、飽き性の人間には合わないのだろう。
そんな点からも、だんだんと人は着物から離れていったのかもしれない。
現在の私はというと、着用者がいない点もあって得することが多い毎日です。どんな会合に出掛けても着物姿は目立つらしいのです。だから先生までもが覚えていてくれる・・・この話は以前にも書きましたネ。
資源の再利用が叫ばれています。いくら叫んでも流行への魅力には勝てません。一度その魅力に浸かった人はその中から抜け出ることは難しいですネ。だから着物業界の我々は、何か楽しさを提供・提案する努力、流行に対する敏感さ、こだわりの追及が必要なのかもしれません。
さて、上記で洋服の衣装としての利点、つまり流行により常に新しい変化することについてのべたが、着物の和装はそれがなくそれが欠点であると考えるかどうか?つまり、着物は着方そのものが人によって違うということ、衿を広く抜くことで色気が出たり・・・近ごろは着付け教室で物売りの為小物を買わせ、がんじがらめに縛り付けて着付けをし、息も出来ない程にする(きれいに見せる為?)着方が流行だが、本来はいつも言うように着なれることが一番なのだ。
きれいにおしゃれするには、日々着ること習うより慣れることなのだ。
日本女性の美しい着物姿を日々ながめたいですネ。
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