第920号 2017年12月26日「着物のこと No.10」
着物に関する仕事を手伝い始めて47年になる。40歳になった時から、営業日は毎日着物を着用している。お茶・お花・日本舞踊・民謡・能・詩吟・琴・三味線など、着物から連想する習い事はいろいろあるが、自分は一切やってこなかった。
老舗の着物屋さんの子どもなら、特にそれが女の子であればなおさら習っている子は多い。私の妹も習っていたが、お茶やお花は、花嫁修業の一環として、一般のご家庭でも習わせているところはあった。今でも習っている人は多いようだ。
昔と今とで違うのは、昔は着物着用でお稽古したものだが、今は洋服姿のまま、着物を着ているという想定で行う。当然、お茶会当日は着物姿となる。粗相をするわけです。着物は、着慣れていないと歩くのも所作もうまくいかない。洋服ならうまくできても、本番ではいつもと違う。茶を点(た)てる時に間違うと困ったことになる。茶道は先生の真似をすることから始まるわけだが、先生も着姿でないと、もう茶道どころではない。
勝手なことを書きましたが、お茶は着物姿でお楽しみください。
第919号 2017年11月25日「元気な専門店」
着物業界に入って44年になる。丁稚(でっち)奉公の3年間は、まだ着物がよく売れた時代で、着用者もたくさんあった。
私が奉公した会社は、商店街やスーパーなどのショッピングセンターに出店していて、値段・量・陳列に気配りした客待ち商法だった。そして毎年のように新規出店を繰り返していた。
一方、実家のほうは、店の立地が悪く、番頭たちが毎日車で外回りをする外商だったが、私が戻った頃は、着物組合による催事販売が主となっていた。前払い式証票による友の会組織を形成し、日々、その集金とケアで顧客を増やしていった。その他のサービスとしては、着付教室の運営、招待旅行や観劇会を行った。お客様には、購入した着物を着用して参加してもらい、楽しんでいただいた。
親父が平成9年に亡くなった。その頃から、世の中が少しずつ変わっていった。カジュアル品の売上が減った。洋服も含めた支出が減り、人々は教育費やレジャー費にお金を使うようになっていった。
平成15年から17年、番頭たちが次々と定年退職を迎えて店を去った頃、残った従業員は新人ばかりで、商品知識が乏しく、振袖中心の店にするしかなかった。
平成16年には私の緑内障が悪化し、車の運転が出来なくなった。そのため、平成12年頃から始めたITを本格化した。
それまでは、何社ものメーカーのパンフレットを利用してきたが、今後のことを考え、オリジナルブックを制作し、高級・ブランド・レンタル振袖を主軸に、男性成人式スタイルや女袴卒業式スタイルも紹介。東海地方の情報誌『月刊なごや』も利用し、七五三・お宮参り・カジュアル着物等の宣伝をし、少しずつ商品アイテムを広げていきたいと考えている。
振袖を主にした頃から始めた、ヘア・メイク・着付・前撮りを店内で行うという従業員も手伝ってのサービスは、お客様にも好評なので続けていきたい。
『元気な専門店』とは?・・・それは、いろいろチャレンジする店がそうなのだと思う。成人年齢を18歳に引き下げるという話、個人情報保護に絡む名簿利用の問題点など、頭を悩ますことはいろいろあるが、今まで何とか乗り越えてきた。これからも、まずはチャレンジすることに重点を置きたい。
第918号 2017年10月27日「ボヤキ No.3」
常着として着物を着ない時代になって久しい。今でも着用されているのは、茶道や民謡等の習い事をしている方くらい。一般の方が着る機会といえば、冠婚葬祭くらいだろう。そうなると、一度着用してから次に着用するまでの期間が開くことが多いわけだ。
外出着と常着を分ける習慣があった頃は、その時々で、シミ抜き等の始末をしてから箪笥(たんす)に収納したものだが、現代は、いつでも外出着となるわけで、着物のお手入れをまったく知らないし、わからないのも当然だ。
相談できる着物屋がある方は、まだ対応が速いが、そうでない方だと、着用してから何年も経った着物をクリーニングしてほしいと持ち込まれる。着るのも初心者だから、結構汚していて、もうシミだらけ。おまけにカビまで生えているものを、『綺麗にしてほしい、それも安価で』と言われる。困ったものです。
汚れは、病と同じで早期発見、早期治療が大切なのです。ただ、夏の浴衣や冬のウールは安価なクリーニング店で、ポリエステルや麻ならご自宅で、というように素材によっては手軽に洗濯することも可能です。
夏に浴衣を着たことから着物好きになる若い方が少しずつ増えているとか。着物の楽しみ方を本で勉強するのもいい。着物屋さんで教えてもらうのもいい。まずは着慣れる、日々着ることです。
第917号 2017年10月17日「着物のこと No.9」
当店には、子役をしているお客様がある。東京・名古屋・大阪の劇場に出演されているというその子の身長は130センチくらい。小物を買いに来店された。
130~140センチとなると、肌着も既製品がない。それならば別誂(あつら)えに・・・としたいところだが、そう簡単な話ではない。ガーゼ生地の扱いに慣れた人なら簡単に縫うことができても、そうでない人にとっては難しい作業なのだ。ミシンが走らないらしい。金額においても、既製品なら安く済む。海外で作れば、ビックリするような安価で出来る。
着物の仕立も海外仕立が多くなった。購入の方の仕立は国内で行うが、レンタル品等は海外に出すことが多くなった。日数はかかるが、別誂えでもきれいに仕上がってくる。誰が縫ってくれたかなんて、商品を見てもわからない。リフォームなどの難しい注文の場合でも、特急以外なら、これでいい。まだしばらくは、こんな感じで時代は進んでいくのだろう。
しかし、着物好きや着物を常に着用されている方からの注文に対応できなくなってきた。単に、私の勉強不足のせいなのかもしれないが、申し訳なく思う。
第916号 2017年9月26日「今どきの商い No.6」
スピード化の時代と言われて久しい。
ある時、荷物を受けつけてから1時間以内に届けるサービスを始めた運送屋さんが現れた、というニュースをテレビで見た。その品をすぐに使用したい人にはとても便利。うまく機能すれば在庫を持つ必要がなくなる。多くの運送業者がやってくれれば、不良在庫を抑えることができて有り難いが、昨今の人手不足の問題もあり、なかなか簡単にはいかないだろう。
急激にネット通販が普及し、当店でも封筒やコピー用紙など、事務用品の購入に時々利用している。数をまとめて注文すれば安価になるし、値段もわざわざ交渉することもない。
当店も、ネット販売にもっと力を入れて売上を伸ばしたいところだが、中小企業にとっては厳しいものがある。大手のように幅広くは出来ない。
『着物』は、染めのこと、生地のこと、ブランドのことなど、着物のことをあまりご存知ない方にとっては難しいことだらけ。何より高価であることから、ネットで購入しようと思われる方は少ない。もちろん、ネット注文も時々あるが、安価な品を選ばれる方が多い。仕方のないことだと思っている。だからこそ、我々は、お客様にお店に足を運んでいただいて、直接やり取りをして信頼していただくという顔の見える商いをしている。
ネット販売に不利な分、いろいろな情報を得るために、良い取引先、広告会社、同業他社とのお付き合いは欠かせない。それと、お客様のご意見に耳を傾けることも。こうして集めたデータを研究し、どこまで生かすことができるかがカギになる。とにかく知恵を絞るしかないかな?
第915号 2017年8月29日「着物のこと No.8」
現代人は、着物といえば絹(シルク)を想像する。その時点で、『着物は外出着である』というイメージが底流にあることがわかる。常着にシルクを着られる人は、よほどのお大尽ぐらいしかいない。
まだ着物を着用する人が多かった時代、夏は綿、冬はウールというのが庶民の着用する素材だったと思う。現代は、その素材が、ナイロンやポリエステルに取って代わられた。石油製品だから、特に冬は暖かい。また、洗濯に強いので、夏に汗をかいたら、何度でも洗えばよい。
本来、日本は、四季の変化のある国だから、季節ごとに着る素材を変えればいいと思うのだが、時代は、そんな面倒を取り除くべく、素材開発に力を入れてきた。例えば、汗をよく吸う繊維だったり、着用すると暖かさを感じる製品。
昔と大きく違うのは、丈夫で洗濯が可能なことだ。洗濯機に放り込めばいいという品は、昔では考えられなかった。また、縫製も洗濯に耐えられるよう現在はミシン縫いだ。だから縫い直しができない。着物は、何度でも解(ほど)いて作り直しができるよう直線縫いで作ってある。時代は変わった。
第914号 2017年7月19日「あんしん」
現代は、『あんしん』を売る時代?もちろん昔からそうなんですが、きちんとお客様に納得させる時代なのでしょう。
テレビコマーシャルでは、こんな商法が多いと思いませんか?特に目立つのは健康食品。『これを飲んだら、食べたらこうなった!』 魅力的な言葉が並びます。
私も、40歳代・50歳代に、あらゆる健康食品を試してみました。でも、しょせんは食品、少なくとも私には効果はありませんでした。娘から『臭い!』と言われただけでした。
現在、健康食品と呼ばれるものは一切飲んでいませんが、薬の量は増えました。薬は、病を治すために飲むものですが、反対から読めばわかる通り『リスク』のあるもので、体に合う人もあれば、合わない人もあります。
戦後、食事が欧米化したことで、身体は大きくなりました。でも、内臓がそれに追いついていないから、アレルギー等、いろいろ不具合なことが身体に起こるのでしょうか?私のような素人にはわからない世界です。『安心・あんしん』という文字は、奥が深い。
第913号 2017年6月27日「個人情報保護法 No.11」
今頃になると、テレアポで喉(のど)はガラガラ。どのお店も、毎年少しずつ早くなっているようで、我店が掛ける頃には、断りかたの上手な方もたくさんおられる。仕事とはいえ辛い。喜んでやっている人は少ないと思う。
個人情報については、監督官庁が消費者庁から個人情報保護委員会に移管されました。当店にも、いろいろな企業から営業の電話が多く掛かる。いちいち相手はしておれない。いい加減な会社もたくさんあるからだ。テレアポのお手本にしたくなるくらい、上手にソフトに対応される方もある。そんな具合にはしゃべれないが、自分なりに店のカラーを出して話すようにしている。
『要らない』と言われれば、すぐ名簿から削除する。それでも、たくさんのDMを出す。当店の場合、立地条件が悪いうえに人手も足りない。案内状とウェブに頼らざるを得ない事情があることから、名簿は大変重要な武器と言える。
テレアポをしていると、よく叱られるが、そんな方は、通信関係やガス修理などの営業電話を掛けてくる人たちにも、『この番号、どこで調べたの!?』と叱っているのだろうか?選挙の勧誘も、我々と同じように電話をしてくるが、これは合法なのだそうだ。今度掛かってきたら、『個人情報保護法、知ってますか?』と質問してみようか?平成18年11月1日までは、役所で名簿の販売をしておきながら、現在はしていない。だが、政治のための電話はいいというのもおかしな話だ。
こういう話はしないほうがいいですね。『つぶやき』ということにしておいてください。
すいません。
第912号 2017年5月16日「おいしい酒」
鍋物、すき焼き、おでんで一杯。友達同士で、ワイワイしゃべりながら飲む酒は美味しい。近頃、そんな集まりが多くなった。きっと、みんな昔が懐かしいからなのだろう。
「○○ちゃん」と呼び合える者同士で集まる会は、飲めなくても楽しい。皆、昔のまんまの顔だ。日頃はしかめっ面をしている野郎や女性たちが、子どもの頃の面影のままで会話をしている。内容は、病気の話や、嫁やダンナの愚痴話だが、年を取っても変わらない笑顔の集まりだ。
この集まりを長く続かせるコツは、頻繁にやらないこと。それなりに、間隔を空けるのだ。酒に酔っては、毎回同じ話ばかりするから、一定の期間を空けないと、『こいつらバカか・・・?』となる。昔を思い出し、バカになって話が出来るからいい。
心の中で、『○○ちゃんも、もうおばあちゃん、おじいちゃんかぁ・・・。』 残念ながら、私には、まだ孫はいない。かわいい孫を連れて、公園や動物園、ディズニーランドへ行った話を聞くのもまた楽しい。
皆、ひと通りの人生を歩んできた。楽しいこと、悲しいこと、苦労もしてきた。もう高齢者の部類だから、昔のように熱くはならない。だからいいのかな?締めは、やっぱりカラオケ。家ではあまり飲めない酒も、血糖値のことも忘れて飲んでしまう。
家に帰ったら、また母さんに叱られるかな?『まあ、いいか!』
第911号 2017年4月28日「つれづれなるままに」
正直屋LINE の友だち登録者が700人を超えた。一方、facebook のほうは、なかなか100人まで到達しない。
個人情報保護法が、平成29年5月30日から改正される。その施行に伴い、名簿業者は、個人情報保護委員会に、個人情報のオプトアウト提供事業者である旨の届け出をしなくてはならず、それを受理された業者しか名簿を扱うことができなくなるらしい。
当店は、以前から、しっかりとした名簿業者からしか名簿の提供を受けていないので、これからも違法に入手した名簿を利用するようなことはない。
入手した名簿の中には、転居済みにもかかわらず、そのままの住所が掲載され続けていて利用できないというものも多く含まれている。今後の対応が大変な時代になってきた。
当店は、ウェブをやり始めてから16年になる。どのお店も、これからますますウェブ対策が重要になってくるだろう。その中で、どう生き残っていくかが問題になる。昨年、その一環として、ウェブサイト制作の委託業者を変えて、内容も順次変更してきた。しかし、責任者である私の知識が乏しいことから、やれることにも限りがある。だから、ウェブの知識が豊富で、着物に関しても精通した方の話を聞ける機会を、どんどん作っていかなくてはいけないと考えている。
着物業界は、厳しい話ばかりで、不安要素だらけだ。しかし、まだ、着物好きの方はたくさんいるはず。夢のある未来は、我々60代の人間が育てるものだ。よい方向に進むべき提案もして、生きていこうと思う。