第930号 2018年9月26日「着物のこと No.13」

景気がいいと言っても、それは大企業だけのことで、中小企業はどうだろう?
求人難も同様だ。今は、売り手市場らしい。働く側からすれば、良い働き場所を選べていいのかもしれない。我々の業種では、規模の大きな会社ほど、こちらが求める人材は入ってこない?中堅企業は大変だろうと想像がつく。来てくれるのは、よほどの着物好きかファッションに興味があって、なおかつ和装の知識がある人、または、ほかの着物屋に勤めた経験がある人くらい。
昔は、ガチャマン景気と言って、作れば儲かる時代もあったと聞く。しかし、海外から安価な洋装品が入ってくるようになり、和装のものを着用しない欧米文化の時代へと変わると繊維産業は衰退していった。
我々の年代の親は、電化製品を買いあさった。それが一巡すると、今度は車や家の購入に変わり、海外旅行やブランド品を買いあさった。余裕のある家庭であれば、着物に憧れを抱いた年代の女性は、着物にも興味を示し、着物業にとって景気の良い時代があった。ただ、購入はしてくださったが、着物を毎日着用してくれた方はごく一部にすぎなかった。だから、タンス在庫が何兆円にも膨れ上がってしまった。
常着として着る紬などは、各産地で手染めや手織りした品であったり、作家が手描で作った一品物だったりする。そんな品を譲り受けた子ども達が、その品の良さを知らず、捨ててしまったり、古着屋に安価で販売したりしている。レンタルでも、まだ着用していただければ有難い。処分されていく着物のことを思うと悲しい。
これからの着物は、民芸品の一種として残っていくしかないのだろうか?いつかテレビ映像で、『こんな時代がありました』と今の時代劇のように出てくる品になってしまうのだろうか?

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