第883号 2015年10月16日「今どきの商い No.2」

『呉友会』という組織を立ち上げてから、もう50年近くになる。前払式証票法という法律の下、お客様にお金を積み立てていただき、必要な時にその積立金でお買い物をしていただくというものだ。呉服組合が通産省から許可を取って始めたもので、正直屋も、その一員として行っていたが、現在は、財務省の管理下で、正直屋が単独で行っている。
集金方法は様々、お客様のところまで集金に伺うこともあれば、銀行振込や引き落としの方もある。いつの間にかお金がたまり、欲しい品が購入できるということで、着物好きの方には大変好評だった。
平成15年から番頭たちが定年等で退社していくと、それまでのように十分な対応ができなくなり、少しずつ会員も減っていった。番頭たちがいた頃は、集金に伺うことが多く、ご購入前後のフォローがきちんとできていた。また、商品知識が豊富な彼らは、どんなことにでも対応できたし、毎日着物を着用するお客様も多くあり、カジュアルな着物がよく売れた。しかし、彼らが去った後は、冠婚葬祭のような特別な行事で着用するフォーマルな着物の販売に特化した時代へと変化していった。
もちろん、現在でも、着物好きなお客様にはカジュアルなものをお勧めし、自らも着用されている呉服屋さんもたくさんある。残念ながら、当店の場合、若い従業員たちでは、そんなお客様への対応は難しく、主に振袖・七五三・式服を販売する店に少しずつ変えてきた。
これから先、また変わっていくのだろう。私は、生きている限り、着物着用者でいたい。

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