第859号 2015年2月25日「誂(あつら)え」

859別誂えの着物というと、高額というイメージが付きまとう。そんなイメージの中で、名古屋友禅の作家は、別誂えに特化した仕事をしておられる。
メーカーにも問屋にも小売屋にも関わりを持たず、その作家の作風に惚れ込んで注文してくるお客様を持っていたり、知人の紹介で注文を受けたりして制作するのである。
このたび、藤井浩氏 の黒か濃紺の訪問着がほしいというお客様があった。今は、インターネットで何でも調べることができる時代。『藤井 浩』氏で検索して、彼の作品やその価格までチェックすることができたようだ。黒の訪問着も載っていたので、その呉服屋さんに問い合わせてみたところ、すでに売れてしまったという答えが返ってきたそうだ。それなら、ホームページから削除したほうがよいと思うのだが、そのまま載せ続けている。
そこで、問屋に問い合わせてみた。いろいろ調べてもらったところ、別誂えでの注文なら受けてくれるというのだ。『1点もの』になるから高額にはなるが、作家の知名度から考えると、提示された価格でも安価なのであろう。
どんな作品にしたいのか?見本があって、その見本のままの作品を作ることもできるが、どうせ作るならオリジナルの作品にしたいものだ。昔は、こんな思いで何度も書き直して仕上げたものだ。春のお茶会用、誰々の結婚式用など、その時期や目的に合った花や鳥、景色を描いた。作品が仕上がるまでの楽しみは格別だったであろう。
以前、大変お世話になった友人に、岩魚(イワナ)の好きな人がいた。そこで、その友人にプレゼントするために青木龍雲氏に岩魚の絵を描いていただいたことがある。それはまるで、生きた岩魚がそこにいるかのような作品だった。
良い作品は、いつまでも残るし、人を感動させる。

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