第827号 2014年7月4日「番頭 No.8」

『そんなおもちゃで遊んでないで、きちんとお客様廻りをしなさい』、と当時62歳の番頭に叱られた。私が社長になって4年目のことだった。
番頭たちが定年退職したら、これまでのような商いはできないということは明らかだった。私は、番頭たちのような人材を育てられなかった。身内の者も何人かいたが、意見が合わず退社していったり、クビにしたり、病気で退社した者もいた。結局残ったのは、女房だけだった。
昔は、展示会もできたし、商品の持ち回りキャンペーンもできた。今は、『友の会』の集金業務も、完璧にはできなくなった。
人を育てることは難しいことだと痛感している。親父は、身内の応援を受けながら、コツコツと人を育てた。番頭が私に注意してくれたお客様廻りは、商いの基本で、やらなくてはいけないことだと理解し、現在も細々と続けている。
4月からは、『友の会』の集金をしながら、『きものお手入れキャンペーン』の案内をして、アフターフォローを行っている。なかなか数字にはならない。
お客様の心を掴み、お客様から信頼を得る店にするには時間もかかる。だが、諦めないことが商いだ。

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