第765号 2013年11月1日「親父の教え No.5」

765親父は、車の運転が出来なかった。だから、遠くへ行く場合は、従業員が乗せて行くのだが、近場は自転車で行動していた。
ある時、お客様から、『お前んところの親父は、毎朝○時○分に俺んちの前を自転車で通るんだ。あれだけ正確に、毎日、同じ行動が取れるなんて偉いもんだ。』と言われた。
毎朝、一番に銀行に行き、帰りに喫茶店に寄り、指定席でコーヒーを飲んで帰ってくるのが親父の日課だった。何年続いたのかはわからないが、友の会の振込みの関係で銀行を替えるまでは毎日続いた。前日の売上(現金)を小額でも預けに行くのだった。
人の生き方は色々だ。自分の人生を振り返った時、後悔することのほうが多いだろう。親父も、そんな毎日だったんだろうと思う。だが、従業員たちに支えられ、自分の道を貫いた。私の意見より、番頭たちの意見をよく聞いた。
出店をする折でも、『こんな地区に出店するより、駅の近くとか、テナントに入るとかの方がいいのでは?』と言っても、『お前は従業員の言うことが信用できんのか!どんな場所に出店しても、我店の従業員ならやっていける!』と叱られた。確かに10~20年のスパンで考えるなら、成功したといえるだろう。しかし、50年のスパンで考えると、地の利は無かった。
どんなに良い番頭でも、年を取り、いつかはリタイアする時が来るのだ・・・などと考えているから、私には、学卒出の新人を育てられなかったのだろうか?と思う。

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