第742号 2013年8月2日「単衣の魅力 No.7」

単衣の着物というと、浴衣くらいしか思いつかない方が多いと思う。卦(け)の日に着用する場合、盛夏に絹をというのなら、紗の着物や絽小紋、それ以外の時期なら、単衣の紬や小紋になる。織物(先染の着物)の産地は日本中にあるが、有名なところでは、十日町、塩沢、小千谷、村山大島、結城、西陣、本場泥大島等々。常に着用される人が少なくなり、着る物から持つ物・見る物に変わってきた。普段に着装されている方からすれば、いろいろな産地の風合いを楽しむことができる。これからは、我々が、きもの文化を残すのか、残さないのかを決める年代に当たる。着ない物は結局は消える。
さて、女物のことばかり書いてきたが、男物はどうか。種類としては、女物以上にある。なぜなら、日本は男社会で成り立ってきたからだ。例えば、江戸小紋は、かつては裃(かみしも)小紋から生まれ出たものであり、その柄を見れば、どこの生家の者かがわかる。つまり、紋と同じ意味合いで作られたものなのだ。これも必要がなくなれば、着用しなくなり、そうなれば消える。幸いにも、時代の変化の中で、女性用として、この何十年と無地着物の代用として着用されたり、おしゃれ着として生き残ってきた。日本人の感性は、すばらしい。
時代の進歩は早い。早いから、知らない間になくなってしまうものは多い。残したいものばかりなのに・・・。

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