第633号 2012年6月8日「絆」

最後のお見送り、つまり、葬式は誰にでもある。幸せだった家族の絆もその時限りになってしまう。
朝のワイドショーで、みのもんたさんの奥様の葬儀を見た。喪主としての最後の挨拶の中で、娘さんが着ている喪服の話をされていた。『娘さんが急に奥様の喪服を着たいと言い出した。寸法が違うからやめるよう言ったのだが、どうしてもということだったので当日着せてみたら、娘さんのサイズに作り直されていた』というものだった。娘さんがそんなことを言い出したのは、葬儀の時には当然のこととして喪服を着るものだという教えがあったからに違いない。娘さんが、突然、親の教え以外の行動をとることは考えにくい。母親はそんなことを想定して、娘には内緒で喪服を作り直しておいたのではないだろうか。昔なら、そんなことはどの家庭でも行われていたことだ。親の子どもに対する教えや愛情はこんなところにも表れる。近ごろは、身内の葬儀でも洋服で済まされる方が多くなった。寂しいですね。
最近は、何でもレンタルできる時代だ。レンタルが悪いわけではない。簡単で手間もいらず片付けなくてもよい。便利な点はたくさんある。しかし、親から子への継承すべき教えを伝えることはできない。きもの屋だから考えることではない。『絆』の大切さを見た思いがした。

ページの頭に戻る