第45号 2005年5月13日 「着物作り」

五月、やさしい風にやわらかい光、一年で一番ウキウキと心躍る季節。
花ならば桜、チューリップの後に、つつじ、藤、バラと咲きほこる五月。ほんのすこし前まで着物をきるときは、お正月には『梅の柄の着物』。五月のお茶会には、『かきつばたの柄の帯」という様に、一つ前の季節にその柄の着物を着用していました。四季のある日本人ならではの粋な着こなしなのでしょう。
 また、卒業式や入学式等、その時季に合った着物を新調する時も、何ヶ月も前からそのことをイメージして、ワクワクしている訳です。着物デザイナーや作家に注文して作るとなると、一年も前からデザインを考え、生地の手配から始まり、柄の選定、染めあげ、仕立て、と手間をかけてやっとお気に入りの一枚の着物にめぐりあう。そのうれしさ!!
 そんな大切な着物ですから、今のように○○加工というものもない時代、汚れやシミの事を考え、紐で袂(たもと)を縛ったり、裾(すそ)をはしょったり、工夫をしながら、体が自然に汚れない様に動いたのでしょうね。半年も一年も先の出来事を想定して、着物を作るのも大変です。流行もありますし………。
 また、『母の思い出の着物』を自分のために染め直したり、紋を入れたりして作り直すのも、着物ならではの楽しみ方です。色といっても、その時の布地や温度、湿度により、ずいぶん多様な変化をし、それがまた出来上がり時の楽しみです。現代では、出来上がった品を選ぶのが普通になりました。仕立て上がりの品(プレタ)を今日見てすぐ、その場で着るという時代になりましたが、昔の様に『着用日を考えて着物を作る』という、そんな心の豊かさ、楽しさもあっていいのでは?
今の日本人なら。

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